みんなのふるさとこぼれ話85 高幡不動尊の幟掛けの松

高幡山金剛寺の不動堂前に「旗かけの松」と呼ばれる黒松があります。実は「旗かけの松」と呼ばれる松の木は日本各地にあり、それぞれ源頼朝、楠木正成、徳川家康など歴史上の有名人にまつわる話が残されています。高幡不動尊の松の木にも、前九年の役(1051~62年)で戦勝祈願に来た源頼義が旗を掛けたという話や、平山季重が参詣した折に源氏の白旗を立て掛けた、などの話があります。しかしこれとは別の、他所とは少し違う話も伝えられています。
昔、鑓水(やりみず)村(八王子市)の与兵衛という人が、家で織った幟旗を戸外で広げて干していたところ、つむじ風が吹いてどこかへ飛ばされてしまいました。与兵衛があちこち尋ね歩くと、高幡不動尊の松の木に幟旗が掛かっているのが見つかりました。そのとき与兵衛は、以前に不動尊に願掛けをしたとき、満願成就したら幟旗を奉納すると誓ったことを忘れていたのを思い出し、すぐに新しい幟旗を奉納して、益々家業が繁盛したといいます。
金剛寺に伝わる「幟掛ケ松由来記」にも、江戸時代の享保年中(1716~1736年)、鑓水村の木下半兵衛という者が高幡不動尊で願掛けをし、願いが成就したら、鰐口(わにぐち)の緒を織り奉納することを約束しましたが、そのまま何もせずに過ごしていたある日、にわかに風が吹いて置いてあった幟を巻き取り、気づくと金剛寺の本堂前の松の木に掛かっていたと書かれています。半兵衛の子孫の与兵衛の家から、三沢村(日野市)の名主の家へ嫁いだ女性がいたため、この話が伝えられたようです。
黒松は昭和30年(1955)に伐採され、現在の松は二代目とのことです。
広報ひの 令和7年(2025)6月号 掲載
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