みんなのふるさとこぼれ話81 大田南畝の多摩川巡見と日野
令和7年のNHK大河ドラマは江戸の出版人蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)が主役ですが、同時代の流行作家に大田南畝(なんぽ)という人がいます。若くして漢詩や狂歌、戯作(げさく)などに文才を発揮した南畝は、幕府の役人でもありました。
文化5年(1808)の夏から秋に大雨による河川氾濫の被害が出たため、幕府は主要な河川の堤防の点検や補修を行いました。南畝は勘定奉行配下の役人として、12月から翌6年4月まで多摩川水系の河川の状況や工事の進捗を見て回りました。
文化6年、数え61歳になった南畝は、1月2日に日野宿の玉屋栄蔵方に宿(やど)をとり、翌日は日野用水下堰(しもぜき)を見に行きました。寒さの厳しい季節に、川風の吹きすさぶ中の巡見は、高齢の南畝には堪(こた)えたようで、しばしばたき火をして暖をとっています。その後も、1月5日と2月16日に豊田村の名主遠藤権兵衛方に泊まり(こぼれ話37号参照)、2月17・18日と3月27日に日野本郷の名主佐藤彦右衛門方に泊まり、多摩川、浅川や用水などを見て回りました。
公務の合間には、高幡不動尊や百草松連寺(しょうれんじ)など名所旧跡を訪れ、旧家に伝わる古文書などを書き写して、地誌や随筆にまとめました。また、日野市内には、このとき南畝が書いた「蕎麦の文」や「鮎の書」などが残されています。
広報ひの 令和7年(2025)1月号 掲載
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