みんなのふるさとこぼれ話72「ミルン童謡抄と巽聖歌・新美南吉」
愛息クリストファー・ロビンのためにA.A.ミルンが書いた『クマのプ―さん』。ミルンは息子に寄せた2冊の童謡集も出版しています。
昭和7年(1932)8月15日発行の童謡同人誌『チチノキ』第14冊には、巽聖歌と新美南吉共訳の「ミルン童謡抄」が掲載され、ミルン2冊目の詩集“Now we are six”(英文初版1927)から7編が抄訳されています。
ミルンの童謡については、昭和15年に冨山房より松原至大(みちとも)の『幼き日のこと』(2冊の童謡集から44編を抄訳)が出版されましたが、巽聖歌と新美南吉の共訳が、ミルン童謡の日本で初めての紹介となりました。
昭和6年9月、『チチノキ』同人となった南吉は、12月、大学受験のため上京し、巽聖歌・與田凖一らの見晴館(みはらしかん)(世田谷区下北沢)を訪ねます。湧き出る泉のような南吉の才能に惚れ込んだ聖歌にとって、南吉は何としても世に出したい存在となりました。
ミルン童謡抄が編まれたこの時期は、ちょうど聖歌と南吉が上高田(中野区)の家で共同生活していた頃にあたります。9月に聖歌が洋画家の武居千春と結婚することになり、南吉は東京外国語学校(現・東京外語大学)の「日新学寮」(現・上高田二丁目公園)に移りましたが、その後も巽家とは家族同然の付き合いをしました。「ミルン童謡抄」は、二人が暮らした上高田での記念碑といえる作品です。
広報ひの 令和6年(2024)2月号 掲載
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