みんなのふるさとこぼれ話76 巽聖歌が書いた宮沢賢治の伝記

童謡「たきび」の作詩者で、市内旭が丘に住んでいた巽聖歌と、日本を代表する童話作家宮沢賢治は、同じ岩手県の出身です。賢治の方が9歳年上ですが、聖歌と賢治は紫波町と花巻市という、すぐ近くの町に生まれました。
残念ながら、聖歌は賢治の生前に会うことはなかったのですが、共通の友人もいて、お互いの存在は知っていました。賢治の没後、昭和9(1934)年2月に行われた「第1回宮沢賢治友の会」にも、新美南吉と共に参加しています。その席上で聖歌は「賢治の作品の中で、第一番に有名になるのは童話だろう」と発言して、会場の人を驚かせました。
聖歌は、昭和31(1956)年に宮沢賢治の伝記を執筆しています。あかね書房の「小学生のための伝記シリーズ」の1冊として、刊行されました。宮沢賢治の伝記は多くの人が書いていますが、聖歌の宮沢賢治伝は、同じ故郷に暮らした人の視点から描かれていて、聖歌ならではの作品となっています。
この本は、郷土資料館の聖歌の資料の中にあったものの、著者の名前がなく、聖歌の著作以外の書籍として分類されていましたが、資料館の職員が偶然解説を読んで聖歌の著作だということが分かりました。
紫波町で巽聖歌の顕彰活動を行っている内城弘隆氏にお知らせしたところ、ぜひ復刻版を刊行したいということになり、令和5年に巽聖歌没後50年、宮沢賢治没後90年を記念して再刊実行委員会が組織されました。聖歌の本文はそのままに、新たな挿絵を付けた『改訂版 小学生のための伝記 宮沢賢治』が、同年に紫波町の録繙堂(ろくはんどう)出版から刊行されました。クラウドファンディングなど、多くの方々の助力によるものですが、日野市の皆さまの応援もたくさんありました。市内図書館で、ぜひ手に取ってお読みください。
郷土資料館が聖歌の資料の整理を始めて27年が過ぎましたが、聖歌の業績を知るだけでなく、当時の児童文学界のさまざまな動向を知ることができる資料としても活用されています。
広報ひの 令和6年(2024)7月号 掲載
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