日野市におけるワーク・ライフ・バランスの取り組み事例をご紹介します(4)

このページの情報をツイッターでツイートできます
このページの情報をフェイスブックでシェアできます
このページの情報をラインでシェアできます

ページID1028471  更新日 令和7年2月27日

印刷 大きな文字で印刷

日野市のワーク・ライフ・バランスに積極的に取り組む企業を今年もご紹介します!

 私たち(日野市・明星大学鵜沢教員とゼミ生・実践女子大学須賀教員とゼミ生)は2021年度より協働し、日野市内の企業、団体などを訪問して、ワーク・ライフ・バランスを中心としたインタビュー調査をする企画を実施してきました。今年度鵜沢ゼミでは、2024年2月1日に日野市SDGs推進事業者登録制度の登録事業者として認められた2社を対象といたしました。また、須賀ゼミでは、地域とのつながりの考え方を共有しているJR東日本・豊田統括センターに取材に伺いました。職場のワーク・ライフ・バランスに積極的に取り組む企業の様々な取組や工夫を、市内の大学生がご紹介いたします。日野市の企業や市民の皆様に広く知っていただきたいと思っております。ご参考になれば幸いです。
 なお、以下にご紹介いたします有限会社アイグランの岩田さんは、2025年3月8日「日野市女性活躍推進シンポジウム」(於:イオンモール多摩平の森3階イオンホール)のパネルディスカッションにパネラーとしてご登壇されます。生のお声が聞かれるかと思います。鵜沢教員がファシリテーターを務めます。保育付き、参加費無料ですので奮ってご参集ください。

(明星大学 鵜沢由美子、実践女子大学 須賀由紀子)

事例1 女性が活躍する地域密着のパン屋 ―有限会社アイグラン―

明星大学3年 高梨幸太、平野良佳、渡辺大海

インタビュー風景(アイグラン)の写真
アイグランにてインタビュー

 私たちは2024年10月16日に、有限会社アイグラン(以下アイグラン)の営業課長の岩田さんにインタビューを行いました。インタビューの際には、アイグラン泉塚店の飯島店長にもご同席いただき、お話を伺いました。また、石窯工房を併設する店舗でインタビューを行ったため、パンを製造している様子なども見学させていただくことができました。


 アイグランは1988年に運営を開始し、2024年で36年目を迎えています。初めは岩田商事という企業の事業の一つとして、「ピコロモンド」という名前でスタートしました。その後1997年にアイグランへと改名し、現在まで運営を続けています。今ではパン工場の本社に加え、今回訪問した泉塚店と、ビバホーム八王子多摩美大前店(以下多摩美大前店)の二店舗を展開しています。また、パンの製造販売だけでなく、季節ごとのイベントや、地域の子どもたちを対象としたパン作り教室など、地域に密着したイベントも行っています。ちなみに店名のアイグラン(EiGrain)は、ドイツ語で「たまご」を意味する”Ei”と、フランス語で「穀物」を意味する”Grain”の、二つを組み合わせた造語となっています。
 アイグランは「安全・安心・健康」をモットーに掲げ、美味しく体に優しい、安全安心なパン作りを行っています。その為、使用する材料にはかなりこだわっています。様々な種類の材料のサンプルを取り寄せ、その中から、できるだけ添加物などが少ないものを使用しているそうです。また、カレーや明太バター、クリームなどといった、パンの中に詰めるフィリングと呼ばれるものも、既製品に頼るのではなく手作りすることによって、なるべく添加物を入れないように心掛けているとのことでした。インタビューを終えた後、実際にパンを食べてみましたが、どれもとても美味しいものばかりでした。


 アイグランの特徴の一つとして、女性が多く活躍している職場であるということが挙げられます。正社員の約半数が女性であり、パート・アルバイトに関しては約9割が女性となっています。そしてなんと、女性管理職の割合は3割以上と、かなり高い数字となっています。これは企業として特に意識しているという訳ではなく、女性の正社員が増えていき、勤続年数が長くなっていった結果、自然とそうなったとのことです。育休や産休制度についてお伺いしたところ、正社員に関しては年齢層が高く、そういった制度を活用した人はまだ居ないとのことでした。今は若い正社員も増えてきているとのことで、今後育休や産休を取得する人も出てくるかもしれません。
 また、勤続年数が長いスタッフが多いという特徴もあります。先日、創業から36年間勤め上げた方が80歳で卒業したり、今でも78歳の方が働いていたりと、特に本社工場で働くパートさんは、長く在籍し続けるケースが多いようです。正社員に関しては65歳が定年となっていて、その後どうするかは本人の意思を尊重しています。実際に、正社員として定年を迎えた後に、今現在もパートとして働き続けている方も居るそうです。


 インタビューを通じて、現在アイグランとしては、モデル店舗の運営に力を入れていることが分かりました。今回訪問した泉塚店は、スタッフ6,7人で運営を行っていました。一方で、もう一つの店舗である多摩美大前店には、少ない人数で運営を行うモデル店舗としての側面があります。より少ない人数で店を回すことができれば、人員を削減することができ、スタッフ全員がより柔軟に休みを取ることができるようになります。それを実現するために、メインではないポジションの補助もできるようにしているそうです。実際に、私たちが多摩美大前店を訪れた際は、2,3人で運営しているような様子でした。しかし、これにはデメリットもあります。それは、それぞれのポジションのスペシャリストと同じクオリティで仕事をするのは難しいという点です。特にパン製造は、細かい技術や繊細な感覚が求められます。そのデメリットを極力減らすために、マニュアル化を行ったり、時間ごとの作業表を作ったりと、様々な工夫をしているそうです。
 今後の展望としては、店舗数を5店舗まで拡大することを目指しているそうです。しかし現状では人手が足りないため、モデル店舗のように、より少ない人数で運営できるような体制を考えていく必要があると、岩田さんは仰っていました。また、それを実現していく為にも、既存のスタッフの育成や新規採用を通じて、自分で考えて動けるような「自律型人材」を増やしていくことが今後の課題として挙げられるとのことでした。

アイグランでの様子
パン製造の様子を見学

事例2 キャリア支援の充実で多様な働き方を可能に ―あいおいニッセイ同和損害保険株式会社―

明星大学3年 鈴木龍弥、高橋風翔

インタビュー風景(あいおいニッセイ)の写真
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社にてインタビュー

 私たちは2024年11月18日にあいおいニッセイ同和損害保険株式会社東京西支店八王子支社に伺い、戸田支社長、女性社員の小又さん、パラアスリートの宮原さん他の皆さんにインタビューをさせていただきました。


 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の基本戦略としてCSV×DXがあります。社会との共通価値を創造していくこと、デジタル技術を活用し、価値提供を変革させることを意味しています。CSV×DX では、地域密着の取り組みを行っています。また、CSV×DXを支える社員がお互いに価値観や違いを認め合い、やりがいを実感できる社会の実現に向けて、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の取り組みを進めています。DE&Iは経営理念の一つで、異なる状況やニーズに応じて最適なリソースや機会を提供し、一人ひとりがチャレンジするための公平な環境を構築することです。
 その中で女性のキャリア形成や障がい者雇用について伺いました。マネージャートレーニング制度は、女性の成長を後押しするキャリア支援策の一つで、2014年から女性管理職養成のセミナー等を実施しています。2023年4月に、部支店長や課支社長、サービスセンター長への女性登用強化に向けて、マネジメント業務の一端を担う副部支店長、副ライン長ポストを新設し、44名の女性の副部支店長、副ライン長を登用しました。部支店長やライン長の業務経験を積むことで、ラインマネジメントに必要な経験の獲得を目指しています。支社長である戸田さんもライン長で、小又さんのような若手のロールモデル像になっています。育児と仕事の両立支援も行っており、性別関係なく、仕事も家庭も大切に出来ることを目指して2022年度の育休取得率は95.8%になっています。現時点での目標は2025年度末までに男性の育休1カ月の取得率を100%にすることです。課題としては、休んだ分の仕事は他の人が代わりに担うことになるため、他の人が休みを取りづらい状況にあることです。仕事の総量を、デジタルの力を使い減らしていく取り組みを行っている最中とのことでした。この取り組みにも、基本戦略であるCSV×DXが活かされると感じました。他の取り組みとして、「あいムーブ」(勤務地変更制度)があります。配偶者の転勤等により転居せざるを得ないケースにおいて、転居先でも継続勤務が出来る制度です。


 また、DE&Iの重要な施策の一つとして障がい者雇用の拡大、活躍の推進に積極的に取り組んでいることが挙げられます。2023年の障がい者雇用率は2.60%で雇用人数は327人です。国の定める法定雇用率が2024年度から2.5%であることから多くの方が活躍されていると言えます。
アスリート社員の活躍もあり、川内優輝さん(陸上・マラソン)や秋田啓さん(車椅子バスケットボール)らが活躍され、2023年4月現在所属アスリートは20人(うちパラアスリート11人)が競技と仕事を両立しています。インタビューでは、ボッチャで活躍される宮原陸人さんに業務内容や競技のお話を伺い、さらにはボッチャの指導をしていただきました。社内の取り組みとして、トイレやデスク周りの整備などがされているそうです。業務と並行して練習や試合などで遠征があれば、休みも取ることが出来ます。スポーツを通じた社会貢献になり、ブランドイメージの向上などに繋がっています。

ボッチャ体験
宮原さんに指導してもらい、ボッチャを体験!

事例3 自由な選択で働きやすさと豊かな時間の創出 ーJR東日本ー

実践女子大学3年 山田陽々季、笠原真優、影山仁香、竹澤咲稀、森菜々美

インタビュー風景(JR東日本)の写真
JR東日本にてインタビュー

 私たちは、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)の豊田統括センターにて、5名の皆様にお話を伺いました。JR東日本では、ダイバーシティの推進に取り組まれており職種や性別を問わず、妊娠・出産及び育児に対する休暇や勤務制限等、仕事と家庭を両立するための職場環境づくりに取り組まれています。

 お話を伺う中で、ライフイベントとの両立を実現可能にするため、制度をそれぞれの働き方に合わせて選択できるような環境整備に力を入れられていると強く感じました。特に、育児は両親揃って協力し合うことが大切になると思いますが、休職を選択することで新たな不安も抱えてしまいます。そんな不安を少しでも解消し、復職後も自信を持って働ける制度を整えているJR東日本の取り組みに魅力を感じたので、一部紹介させていただきます。

 

  • 産後パパ休暇制度

 令和4年10月の育児・介護休業法の改正を受けJR東日本でもダイバーシティを推進するために、産後パパ休暇を設けることにしたそうです。
産後パパ休暇とは産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休暇で、育児休職とは別に取得できる制度です。男女ともに仕事と育児の両立を図るため、取得ニーズが高い子の出生直後の時期に、これまでよりも柔軟で取得しやすい休暇として設けられました。
JR東日本では「職種や性別にかかわらず、仕事と育児・介護を両立するための選択肢を増やしたい」という強い思いから、職場内でも制度を利用しようという雰囲気があり、豊田統括センター内でも8人以上が産後パパ休暇を取得しています。この他にも、3日間有給で取れる配偶者出産休暇や急に子供が体調を崩したときに取れる養育休暇などがあり、これらの制度と組み合わせながら取得することが育児と仕事の両立に大切だと伺いました。
このようにJR東日本では、性別に関わらず誰もが育児に参加できる取り組みを推進しています。

  • 休職中でも資格が取れる

「社内通信研修・社外通信研修」があり、仕事に関するスキルの維持や向上に役に立つ講座が多数用意されています。
休職中にキャリアが遅れることへ不安を抱える人も多くいる中で、語学や資格試験などを受講できるなど、サポート体制が充実していることも特徴です。スキルアップを図れるだけでなく、指定の通信研修講座を修了した場合は、昇進試験などの受験資格に必要な在級年数に休職期間も算入され、復職後によりいっそう活躍できるチャンスが広がります。
実際に、豊田統括センター内でも育休中に昇格試験を受け、合格した方もいらっしゃるそうです。

 

 休職に関して、自分が休んでいる期間は他の人が支えてくれていて、その分を他の人が休んでいる期間に自分が支えるという「お互い様精神」が印象的でした。
JR東日本の主な業務である電車を走らせることに関しても、運転士、車掌、車両を整備する人、線路の整備・清掃をする人、駅構内でサポートをする人など、全ての人が自分の役割を全うし、お互いを尊重し合っていることで成り立っています。業務以外のサポートに関しても、このお互い様精神があるからこそ、休職をする側と周囲の人が良い空気感で居られる職場環境になるのだと感じました。
 また、インタビューの中で、「運転士の代わりは沢山いるけれど、お母さん・お父さんの代わりはいない」という言葉を伺い、会社全体で家族を大切にする環境があることが伝わりました。
企業問わず現状として、小さいお子さんがいても働きたいと考えている方でも、職場内での勤務の融通が利かずに無理を強いられることや、子育てとの両立が厳しいことで辞めることが選択肢となってしまうことも存在すると考えます。その中で、小さい子どもがいても無理なく働くことのできる環境は非常に魅力的だと感じました。

このページに関するお問い合わせ

企画部 平和と人権課
平和と人権係

直通電話:042-584-2733
ファクス:042-584-2748
〒191-0062
東京都日野市多摩平2丁目9番地 男女平等推進センター
企画部平和と人権課へのお問い合わせは専用フォームをご利用ください。