日野市におけるワーク・ライフ・バランスの取組事例をご紹介します(2)

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ページID1023398  更新日 令和5年2月16日

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企業等のワーク・ライフ・バランスの取り組みを、今年も大学生がお伝えします!

 2022年の日本における出生数は、統計を取り始めた1899年以来初めて80万人を割り、過去最低となる見通しとなりました〔2022年12月20日厚労省 人口動態統計(速報値)〕。少子化の背景には、教育費の高騰や非正規労働の増加、晩婚化、非婚化等が挙げられますが、性別問わず、仕事と私生活、子育てや介護、趣味などの調和のとれた生活が重要であると言われています。また、このワーク・ライフ・バランス(以下WLBとする)への政府や企業による支援が充実した国では、育児に伴う幸福感の低下が見られず、全ての人々の幸福感が他国より高い傾向にあるとする調査もあります(日本経済新聞 2023年1月23日「幸せに生きるために(7)」)。

私たち(日野市・明星大学鵜沢教員とゼミ生・実践女子大学須賀教員とゼミ生)は2020年度より協働し、日野市内の企業、団体などを訪問して、WLBを中心としたインタビュー調査をする企画を実施してきました。2022年度も優れた事例を取り上げ、WLBの施策を実行するポイントを、次世代を担う学生がお伝えし、日野市の企業や市民の皆様に広く知っていただきたいと思っております。ご参考になれば幸いです。(明星大学 鵜沢由美子)

事例1 オーダーメイド型の働き方で100年企業を目指す エム・ケー株式会社

明星大学3年 志村百茄・岡庭司

インタビュー風景の写真(日野市役所)

私たちはエム・ケー株式会社の皆さんにインタビューを行いました。インタビューでは主にWLBへの取り組み、働き方やその事例、今後の課題についてお聞きしました。

エム・ケー株式会社は、日野に本社を構え、社員数41名(男性が25名、女性が16名)で168億円(令和4/1月期)の売り上げを出す「小さな大企業」です。

会社にはWLBに向けた特徴的な制度や取り組みが存在しているというよりも、少人数ででも高い売上を出し、かつ社員がWLBを保って働けるような仕組みが自明に整えられ共有されているという印象でした。

まず会社の方針として大きく次の2つを挙げていました。1つ目は「残業・ノルマなし」というものです。残業時間は年平均約10時間(直近1カ月平均9.3時間)と少なく、そもそも創業当初から残業文化がないのだそうです。また、不動産業は歩合制である場合が多いのですが、エム・ケーの場合は10年15年と長期事業計画で上場もしていないため、ノルマや売上目標達成を目指すのではなく中小企業特有の比較的自由な形でできているとも仰っていました。さらに2つ目に「一人前になるまで5年かかる」ということも挙げていました。不動産のノウハウがわからないままノルマを与えて焦って仕事をさせるよりも、無駄なことはせずエム・ケーがやるべき仕事だけを積み重ねて、人を大きく育てるという考え方なのだそうです。エム・ケーはそうした方針のもとで100年続く企業を目指しており、一個一個の仕事を着々と続けて、それで実った大きな実をみんなで食べる、いわば「農耕型経営」の会社だと仰っていました。

そして、少人数でも大きな売上を出して働ける理由には、社内の風通しがよく、オーダーメイドの働き方が可能であることも挙げられると思います。例えば、エム・ケーの営業部では朝9時に社員の情報共有をするための会議を行っているそうで、個人プレーになりがちな営業の仕事もチーム全体、会社全体で動こうという姿勢の表れとのことでした。また、「働きたい気持ちや体力があれば定年に関係なく働き続けることが可能」という考えのもと、60歳の定年後の知識豊富な60代・70代の方も受け入れているのだそうです。今回インタビューさせていただいた方々も、それぞれ16年のブランクを経てジョブリターンされてきた方・2度の転職を経て、家族との時間を大切にできるエム・ケーの体制に惹かれて入社された方でした。そのように社員の様々なライフコースに合わせて柔軟に対応をしうる点が特徴的であると感じました。上記の会社の方針と気軽に情報共有できる機会が設けられている点、年代、経歴問わず多様な知識を持った人材を受け入れている点が、社員仲が良く相談しやすい空気を作っており、それによって仕事も早く終えられて残業せずに高いパフォーマンスを発揮できるという好循環につながっているのではないかと考えました。

今後の課題としては、産休・育休取得率はこれまで申請した5人全員が取得して100%であるものの、復帰率は0%のため、復帰を当たり前として言い出しやすい環境を整えていくこと、また少人数のため属人的な仕事の仕方を改善していくことが挙げられていました。

事例2 支え合いの組織作りがワーク・ライフ・バランスを実現

実践女子大学3年 奥山結衣・水野優花

インタビュー風景の写真(日野自動車)

私たちは、NPO法人市民サポートセンター日野様にお話を伺いました。市民サポートセンターでは、制度なくともワーク・ライフ・バランスが実現されていることが特徴です。

例えば、一人一人働きたい時間に好きなように働くことができる環境が整っています。これは、職員数が多いこと、そのほとんどが女性であること、コミュニケーションを大切にしていることで実現されていることが分かりました。特に組織内のコミュニケーションを大切にされていて、お昼休みにサラダを持ち寄り、みんなで食べながら身の上話をすることもあるそうです。一人一人を知ることで助け合いの心を強くし、この柔軟性を実現しているのだと感じました。

日野市の市民サポートセンターは子育て支援以外に、家事や高齢者の支援も扱う珍しい特徴があり、さまざまな家庭の事情に寄り添ったサポートができるようになっています。

例えば事業の一つに「ふれんどさん」というものがあります。子育てのサポート、家事の手伝いはもちろん、子どもの送り迎えや「たまには人の作ってくれた温かい料理を食べたい」、「夫婦でデートの時間をつくりたい」という声にも応えています。仕事と生活のバランスをよくするサポートに加え、家庭の豊かな暮らしや地域の人とのつながりをつくる役割も担っていることが分かりました。このように、事業自体が市民のWLBを支えるものであり、だからこそ働く環境もしっかり整っているのだと感じました。

また、「家族第一に考えて」という理事長の言葉も反映されています。今回お話を伺った、理事・事務局長の土屋さんはこの言葉を、「女性は特に、出産や育児、介護など、ライフステージによって課題が違うから、先の見通しがつきづらく、なにがあるかわからない中で働かないといけない。それには家族を大事にしておかないとやりたいことができない」と解釈されていました。子どもが不登校に、身よりのない会員が病気に。60人もの職員それぞれに向き合い柔軟に対応されている様子がさまざまなエピソードから伝わってきました。

インタビューに応じてくださったお二人はこの機会を通して、内閣府の「仕事と生活の調和憲章」にたくさん当てはまっていることを知ることができたそうです。制度ではなく、一人ひとりの暮らしを尊重した風土だからこそできたものだと言えます。利益追求ではないNPO法人の特徴も相まって、この風土と柔軟性を実現していると感じました。WLBは制度のような義務的なものではなく、働く人みんなが自然と実現できるようにしていくことが大切です。制度があっても使わなければ意味がないので、そのためにはこのような働きやすい組織づくりが一番大切であると感じました。

事例3 お客さまの幸せづくりのために職員の幸せづくりにも力をいれる 多摩信用金庫

明星大学3年 内田朱音・山室亮介

インタビュー風景の写真(日野市役所)

 私たちは2022年8月26日にZOOMを用いて多摩信用金庫にインタビューを行いました。

 多摩信用金庫は1933年12月26日に有限責任立川信用組合として設立、2006年に3金庫合併により現在の多摩信用金庫となりました。東京都立川市緑町に本店を構え、多摩地域の各地に支店があり、日野市内にも現在6つの支店があります。信用金庫は、地域のために作られた協同組織金融機関であることから、相互扶助の精神のもと、多摩地域の「お客さまの幸せづくり」という経営理念実現に向けて取り組んでいると仰っていました。さらには、「そもそも働いている職員自身が幸せでなければお客さまの幸せづくりは実現できない」と考え、職員のWLBの実現にも積極的に取り組んでいるのだそうです。

 有給休暇の平均取得日数は2021年度12.6日となっており、前年対比で0.9日増加をしています。しっかりと休みを取り、プライベートの時間も確保することで、職員がモチベーション高く働けるように、様々取り組みを行っているとのことでした。具体的には、有給休暇の取得日数を各事業所の評価項目に加えること、さらに、金融機関は土曜日、日曜日が休みということを利用したウィークエンドプラス休暇という有給休暇の取得を推進する制度の実施等です。独自の特別休暇も多く、その中には、配偶者出産休暇という、主には男性職員に、配偶者の出産予定日の1カ月前から出産後6カ月までの間に通常の有給休暇とは別に10日間特別休暇が付与される制度もあり、これは他社と比べても期間や日数が多く手厚いものとなっています。また、これは2022年の育児・介護休業法改正以前から実施されており、最先端の取り組みであることが窺えます。その結果、配偶者出産休暇を含む2021年度の育児休業及び育児目的休暇は、男性の取得率が54.7%、女性は100%が取得、復帰率も100%と高くなっています。

 実際に2度の育児休業を利用した女性管理職のTさんは、育児休業について「安心して取りやすい環境がある」と語っていました。また、育児休業を取得することで、仕事をしながらではできない経験ができ、人生観が広がったと仰っていました。

 仕事と育児の両立への支援策には、他にも工夫をこらしたものがあります。1つ目は保育園との提携です。多摩地域内複数の保育園と提携し、子どもを預けることができる場を増やすことで、職員が安心して働ける環境を作るということに取り組んでいます。2つ目は「ジョブリターン制度」です。これは、妊娠・出産や転居等のやむを得ない事情で退職した職員を対象に、ライフプランに合わせた職場復帰を可能とする制度です。職員の声を参考に2017年から始まったということです。

 また、若手女性職員を対象にさらなる能力発揮を目的とした「ポジティブアクション研修」や、多様な価値観を知り、視座を広げること等を目的に他企業の職員との異業種交流を促す「ルックアップたちかわ女性会」などを実施し、女性活躍推進にも取り組まれています。

 今後の課題として、男性の長期での育児休業の取得の推進を挙げられていました。多摩信用金庫独自の配偶者出産休暇を利用することによって10日間、有給休暇も活用すると1カ月以上も有給で休みを取ることが可能なため、育児休業という形で長期取得する職員の数は、現状少ないのだそうです。

事例4 グローバル企業の発展の鍵は密なコミュニケーション GEヘルスケア・ジャパン株式会社

明星大学3年 岡田奈菜子・佐藤侑樹・小久保昴

インタビュー風景の写真(コニカミノルタ)

2022年10月26日にGEヘルスケア・ジャパン株式会社(以下GEヘルスケア)にインタビューを実施(感染対策のためZOOMでの開催)、人事部の方2名に主にWLBについてお話を伺いました。

GEヘルスケアは本社を米国に置くグローバル企業であり、MRI、CT、超音波診断装置、麻酔器、デジタル製品、造影剤など医療機器の総合メーカーとしての事業を主に、幅広く日本の医療の課題解決に取り組んでいます。企業の大きな考え方の軸として「インクルージョン&ダイバーシティ」「セーフティ&リーン」「GEリーダーシップビヘービア」を置いています。今回はWLBに関係する「インクルージョン&ダイバーシティ」について詳しく伺いました。「インクルージョン&ダイバーシティ」とは多様なメンバーが集い、1人1人が認められ輝ける場を与えられること、ベストな人材がベストな仕事ができる環境を目指すというものだそうです。

 この活動として主に4つの取り組みを行っています。

  •  女性活躍推進 このために組合員とリーダーの座談会や女性社員の意識調査を行っており、役員及び管理的地位にある者に占める女性の割合は28.1%だそうです。
  •  障害に対する相互理解の推進 国際障害者デーにアンコンシャスバイアスについてのパネルディスカッションを行うなどの取り組みをしています。
  •  性的指向 就業規則上の「配偶者」に「事実婚」及び「パートナーシップ(同性婚)」が追記されているそうです。現時点ではパートナーシップ制度の利用やセクシュアリティについて公表している社員はいないとのことでした。
  •  働き方の多様性 制度の例:フレックス制度、リモートワーク制度、短時間正社員制度、サバティカル休暇制度を取り入れています。コロナウイルス感染症の流行前から月8日迄のリートワークを進めており、現在は限度なく在宅勤務を可能にしたそうです。チーム単位でより最善な働き方を相談して決められるという1人1人に合った働き方を取れるとのことでした。また「GEヘルスケアの社員の特徴として、制度を作ると積極的に利用してくれる人が多い」と仰っていました。座談会などの活動も制度を利用している方々が企画して主体的に行っているとのことです。

今回GEヘルスケアのインタビューを行ってとても印象的だったのは社員同士のコミュニケーションが多いことでした。その1つとしてタウンホールミーティングを行っているそうです。経営陣と従業員との対話の場でありラフに意見を交わせる場ということでした。またラウンドテーブルという10人以下でより密にコミュニケーションを取れるような手法も合わせて行っているそうです。ほかにも上司の1on1で定期的にキャリアについて相談できるものや「STEP新聞」という社内ニュースレターや社内SNSがあり積極的に活用されています。「いろんな形でいろんなレベルでコミュニケーションをとることで自然な意見が出てきやすい。このような社内でのコミュニケーション手法はグローバル企業の特徴であり利点である」と仰っていました。

WLBに関しての課題としては働く場所や時間の多様性が高まり、リモートの環境で相手がどのような状況かを察する事が難しくなっていることが挙げられました。多くの場合はITの発展や制度設計により、個人の状況や稼働状況が把握できるようになっていますが、お互いに個人的なことに踏み入らないようになりがちな環境で、お互いの異変に気づけて声をかけられるような関係性をいかにつくるかということがコロナ禍でDXがさらに進む現況の課題といえそうです。

このページに関するお問い合わせ

企画部 平和と人権課
男女平等ダイバーシティ推進係・平和と多文化共生係

直通電話:042-584-2733
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