新春対談 すべての子どもたちが夢と希望を持って成長していけるまちへ(令和6年1月号広報)

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ページID1025569  更新日 令和5年12月26日

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日野市はまち全体で子育てを応援します

 市は妊娠期から18歳まで切れ目ない支援をする「子育てしたいまち・しやすいまち」を目指しています。子どもたちが自分らしくたくましく成長できるよう、まち全体で子育てを見守り・応援していきます。今回の新春対談は子育てアドバイザーの高祖常子氏をお招きし、誰もが安心して子どもを産み育てるまちとなるために取り組むべきことについてお話を伺いました。

(令和6年1月号広報ひの 掲載)

タイトル画像

対談者紹介

子育てアドバイザー・キャリアコンサルタント。 NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事。 NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。 株式会社リクルートで編集に携わったのち、育児情報誌 「miku」の編集長を14年間務めた。「体罰等によらない 子育ての推進に関する検討会」(厚生労働省令和元年度)、 「中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業評価 検討委員会」委員長(内閣府令和3年)、「幼児期までの 子どもの育ち部会」委員(こども家庭庁令和5年~)ほか、 国や行政の委員を歴任。全国で講演活動を活発に行っ ている。著書は『感情的にならない子育て』(かんき出 版)ほか多数。3児の母。

子どもや子育て家庭を取り巻く環境が変化している

高祖:私は、企業で編集の仕事をしていましたが、子どもが生まれるタイミングでフリーとなり、3人の子どもを育てながら働いてきました。編集や執筆活動を経て児童虐待防止全国ネットワークやファザーリング・ジャパンなどのNPO 活動を始め、そのご縁で子育ての話や虐待防止、感情的にならない子育てなどの講演をしています。

市長:よろしくお願いします。今、一番心配なのが市内の児童虐待対応件数が飛躍的に増えていることで、市の子ども家庭支援センターは日々その対応で忙殺されています。以前に比べ通報制度が浸透したこともありますが、児童相談所からの送致の数もここ2・3年非常に増えており、何とかしなければいけないと思っています。
 あと、子育ての孤立化の問題です。子育ての孤立化は虐待の原因にもなり、行政もさまざまな対策をしているのですが、十分ではないと感じています。

高祖:私も、虐待対応件数に注目しています。おっしゃる通り通報制度が浸透したという説もありますが、虐待件数は減っていないという現場の声もあり、これは減らさなければと思います。そして虐待死ですね。全国の虐待死の件数が毎年70~80人ぐらいでずっと横ばいです。そこもどうにかしないといけません。
 いじめや不登校もかなりの数にのぼっています。子どもたちが過ごす場所の安全安心が守られていないことも気になっています。

児童虐待相談件数は、平成19年度に64件あり、その後は同じような数で推移していましたが、平成28年度に201件となり、この頃から件数が大きく伸びはじめました。令和2年度に378件、令和3年度に731件、令和4年度に908件となっており、近年はさらに増加傾向にあります。虐待の内容は身体的虐待、心理的虐待が多数を占めています

安心して子どもを産み育てる~妊娠期からの切れ目のない支援

市長:日野市はこれまで、妊娠期、産前・産後、そして子育てが始まり、幼児教育から、小学校へとつながる切れ目のない支援をしてきました。
 市独自の取り組みとして、里帰り出産ができず一人きりで赤ちゃんの世話をしているお母さんに産後家庭向け配食サービスを行い、母子の様子を見守っています。育児をしながら食事を作るのは大変なので、お母さんから高評価を受けています。
 もう一つが子どもたちの放課後の居場所「ひのっち」です。通常は学童クラブや児童館ですが、それに加えて日野市は「ひのっち」があります。ひのっちパートナーという地域ボランティアの力を借り、登録制ですが、市内全小学校で給食のある日の夕方まで、教室、体育館、特別教室で過ごすことができます。
 他の自治体では夏休みは通常はお休みですが、昨年日野市は全校で実施しました。このあたりは頑張ってきました。

高祖:とても素晴らしい施策ですね。産後のご飯の支度は本当に大変です。子どもの世話をしながら冷めたご飯を立ったまま食べていますという話もよく聞くので、そこは大変助かっていると思いますよ。
 あとは、子どもたちの居場所の問題。これは自治体によってすごく格差があると思います。全校に子どもの居場所があることは本当に素晴らしいです。

市長:ありがとうございます。

地域全体で子育てをしていく重要性

高祖:まず、これからは地域社会で子育てしていくんだと国が方針を出して浸透させることが重要だと思います。私も国の委員をする中で、地域内やNPOの活動での小さな単位の取り組みから、良い取り組みが自治体や国へ拡大されていく事例に触れることも多くあります。市民の方々の力がまずはスタートにあることは大事だと思っています。

市長:施策を立ち上げる際には、子育てに関心がある方々に会議に加わっていただき、連携のもとで決定・実行しています。行政だけではなく地域のNPOや団体にお願いすることもあります。そういう意味では、行政だけではなく、地域住民、ボランティア、NPOなどさまざまな主体によって支えられているので、それをどう広げていくのかが鍵となります。意識的に地域コミュニティーを作っていかないといけないですね。

対談の様子の写真

今後どのような取り組みが重要となるか

高祖:妊娠期からの伴走型支援は本当に重要だと思います。あとは、なかなかSOSを出しにくい方をどうしたら支援できるかがとても大事だと思っています。

市長:日野市は、東京都の「ファミリー・アテンダント事業」という実験的な伴走型支援事業に手を挙げ、今年から参加します。この事業は、専門の研修を受けたボランティアを希望する子育て家庭に派遣し、悩みの相談や、家事・育児を一緒に行うアウトリーチ型(さまざまな形で必要な人に必要なサービスと情報を届けること)の支援事業です。実施に際しては、すでに「赤ちゃん訪問事業」で実績のある民生委員の皆さまにご協力いただきます。行政(保健師による乳児家庭訪問)だけでなく、地域の皆さまと協働で子育て家庭を重層的に支援する仕組みを整えていきます。

高祖:訪ねてもドアを開けてくださらない方も中にはいると思いますが、そのような方に対しての施策はありますか。

市長:現状、母子保健の赤ちゃん訪問は90%を超える高い率ですが、集団で行う乳幼児健診を受診したかなども管理しています。あとは市内に19カ所ある子育てひろばや児童館などに相談機能を設けて困ったらどこでも相談できる体制を整えています。
 いろいろなチャンネルを用意してSOSをキャッチできるよう努めています。

高祖:産後のパパ・ママと話をすることも多いのですが、ぜひ、パートナーとともに子育てをスタートさせるため、妊娠中に子育てを学べる機会があるといいと思っています。生まれる前に子育ての話をされても実感がわかないでしょう。でも実際に子どもが生まれて泣いているときに「泣きやまないこともあるって言ってたな」とか「泣きやまなくても大丈夫」という知識があると、子育ての対応も変わってくるかなと思います。
 産前の講座を夫婦で一緒に受けていただくことはとても大事だと思っています。

市長:日野市にもママパパクラスがあり、以前に比べれば父親の参加も増えてはきましたが、生まれてから戸惑わないよう予備知識を蓄えておく、そのあたりは確かに大事ですね。

高祖:学生などの若年層にもデートDVなどの問題があるので、年齢や学年に合わせて暴力・暴言を使わない、相手を尊重するということを学んで欲しいと思います。このようなことが将来の夫婦や家族の姿にもつながっていくのではないでしょうか。ぜひ、日野市も幼児期から年齢に合わせた権利教育を取り入れていただけるとうれしいなと思います。

市長:日野市も平成20年に子ども条例を作りました。また、5月末から子どもオンブズパーソン制度がスタートします。不安なことや心配なことがあれば、子ども自らが相談できる窓口を作ります。

高祖:素晴らしい。叩かれたり、どなりつけられたりするのは自分が悪いからではなく、それはおかしいことだと気づき、言えるような子どもの権利教育が必要です。子どもオンブズパーソンなどの窓口で相談ができ、その相談をしっかり受けとめてくれる専門の方がいて、場合によっては施策にも組み込んでいくようなことが体系的にできれば本当に素晴らしいと思います。期待しております。

市長:先ほど「なかなかSOSを出しにくい方をどうしたら支援できるか」というお話がありました。相談してもらう敷居が高く、その結果、悲惨な虐待につながってしまうということがあり、以前に比べれば国、東京都、各自治体で対策をとっていますが、まだまだ不十分です。相談支援のハードルを下げるためには、どのようなことをすればいいでしょうか。

高祖:私は育児誌の編集長をしていた際に海外の状況を取材したのですが、海外の女性は、「私、これやりたいからあなた手伝って」みたいな夫婦間のコミュニケーションがすごく活発でした。
 日本では遠慮がちなママたちも多く、声を上げにくい状態になっていることもあると思います。
 相談のハードルを下げるためLINE 相談などで相談の入り口を増やすのも一つですが、やはり相談する人の顔が分かるほうが安心できますね。ファミリー・アテンダント事業でおうちに育児グッズを持ってきてくれた人に心配ごとを気軽に話すことができるようになると、とてもいいと思います。日本人は知らない人には相談しにくい傾向もあるようで、顔が分かっていると相談のハードルが下がってくるのかなと思います。

市長:そういう人のつながりをうまく作って、この人だったら話ができるというキーパーソンが相談支援の中で活躍できるということですね。
 もう1つ伺いたいのが、子どもの分野にはさまざまな行政が関わっていますよね。例えば虐待だったらケースワーカー、母子保健の保健師、生活保護のケースワーカーなどですが、そういうさまざまな方々が関わる場合の相談支援のネットワークが難しいと感じています。例えば児童相談所とその地域の子ども家庭支援センターとの連携がうまくいっていなかったことが原因で悲惨な虐待死を招いてしまうなど、その辺りが課題だと感じているのですが。

高祖:そこは、どこの自治体も苦労されていると思います。私はやはり顔が見える関係が大切だと思うので、各機関が集まった合同研修などを年に1、2回でもするといいと思います。あと「連携しましょう」とか、「見守っていきましょう」という言葉が並びますが、連携ってそもそも具体的に何をするんだろう、見守っていきましょうって、誰がどのように見守るのかということですね。言葉では分かっていても、結局、誰も見守っていないということにもなりかねません。「子育てひろばに週2回ぐらい来る親子に話しかけたり、様子を確認するようにします」みたいな感じで、できるだけ具体的にしていくことが必要だと思っています。

市長:日野市は虐待についてはかなり介入的な支援をしています。一方で、例えば母子保健や女性相談では寄り添う支援です。ただ、寄り添う支援と介入的支援はぶつかることがあるんですよね。そのあたりはどのようにしたら良いでしょうか。

高祖:確かに難しいですね。でも一番大事なのは、私は子どもの命だと思います。子どもの命が危ないかもしれないのに、親との関係を重視するあまりに保護した子を家に帰してけがや命を奪われてしまうこともありますね。子どもの命を最優先にして毅然として対応することはとても大切だと思います。また、子どもになぜ自分はここに保護されて来たのか、いつまでいるのか、この先どうなるのかなど、状況をよく説明していないケースも多くあります。
 虐待を受けて家の中で過ごすことが怖い子は、そもそも大人と一緒の屋根の下で暮らすこと自体が難しい子もいますから、子どもの気持ちを聴きながら一緒に考え、丁寧に伝えていくことも必要なのかなと思っています。

日野市は令和6年2月から市内全域でファミリーアテンダント事業を開始予定です。ファミリーアテンダント事業では、まず「見守りアテンダント」が産後家庭を訪問し、育児支援品の提供と共に相談に乗り、家庭の状況把握に努めます。その中で支援を希望した家庭には寄り添いアテンダントを派遣し、各家庭のニーズに沿った支援を行っていきます。寄り添いアテンダントによる支援の内容は、話を聞く、子供と遊ぶ、病院や役所への付き添いなど多岐にわたります。

5月に子ども包括支援センター「みらいく」を開設~さらなる子育て支援の起点に

市長:日野市は令和2年から子ども包括支援センター「みらいく」の開設準備をしてきました。
 健康課にあった母子保健部門を子ども家庭支援センターに統合し、加えて保育園を所管する保育課、子どもの活動を包括的に所管する子育て課など、子育てに関するすべての機能が一つの建物に入って総合的な連携体制を構築します。これは、こども家庭庁の構想をそのまま先取りする形です。その中で子どもなんでも相談を始めます。そこに子どもオンブズパーソンなどがすべてつながる。新しい子育てひろばもありますし、今まで手薄だった中高生世代への支援にも着手します。
 5月からスタートをする「みらいく」。ここを起点に子育て支援をさらに進めていきたいと思っています。

高祖:本当に素晴らしいと思います。縦割りの問題も一つの場所に集まっているだけでコミュニケーションがスムーズになることも多いと思っています。子育ての悩みって一つではなく、つながっていますよね。障害のある子だったり、介護しながらの子育てだったり、この分野はこの部署が担当と明確に分けられないので、子育て支援を統括する「みらいく」のような場所があるのはすごくありがたいなと思います。あと、中高生世代の居場所が本当に少ないので、それも作ってくださるのはすごくいいなと思います。

市長:日野市の発達・教育支援センター「エール」にはスクールソーシャルワーカーが配置されていますが、今後はエールとみらいく両方に席を置いてもらい、学校とも連携を図ります。また、小・中学校には1人1台パソコンが配備されておりますので、そこから相談も受けられるようにしたいと思ってます。
 あとヤングケアラーの対策。今年度中に支援の基本的な考え方をまとめ、来年度には支援の連携の核となる人材(コーディネーター)を配置したいと考えています。いろいろなケースがあり、簡単には進まないのですが。

高祖:相談窓口があるのは大きいですね。国にはスクールカウンセラーを学校に常駐させて欲しいと思っています。
 まずは子どもが相談しやすい環境づくり、そして子どもの権利。ぜひ、子どもの権利について子ども自身が学べる機会を作っていただければと思っています。家族の世話や家事で宿題をする時間がなくなっちゃったとか、学校を休まなきゃいけないとか、それはお手伝いの範囲を超えてるよ、それは行政のいろいろな支援を使っていいんだよということに気づいてもらうためにも、子どもたちが権利について学ぶことが必要だと思います。
 あと、国も言っていますが、やはり男性の育休取得ですね。共働き家庭が多いので、働くことと子育ての兼ね合いがうまくいかない家庭もすごく多い。市内企業に向け、働き方改革なども含めて、ぜひ市長からお声掛けいただければと思います。

子ども家庭支援センターみらいくは、すべての子どもの健やかな成長を切れ目なく支援する 子ども・家庭・地域の子育て機能の総合支援拠点として令和6年5月に開設予定です。

子育てしたいまち・しやすいまちに

高祖:目指すところは、子どもが欲しい人が安心して産み、育てられる環境・社会になることですよね。今その部分が不安だらけです。経済面もですし、いじめや不登校などもあります。今は相談先もいろいろあり、それぞれの自治体での施策もありますが、何か困った時に、まず自分で調べて自分で届けを出しに行かなければいけない。本人が能動的に動かなければ事態がなにも解決しないことは課題だと思っています。
 子育てについての調査で、だれが子育てについて責任を持つかという問いに、スウェーデンやドイツは「国が責任を持つ」という答えが多く、日本は「親が責任を持つ」という答えが断然トップでした。子育てについて国が責任を持ってくれるという安心感があれば、虐待やイライラを子どもにぶつけてしまうことも減ると思います。養育者にいろいろな不安が重なってしまった結果、子どもにストレスを爆発させてしまい、虐待につながってしまうのです。いかに安心・安全な子育て環境を保てるかが大事です。
 今は「子育ては大変」というイメージが大きいですが、子育てって楽しいこともいっぱいあります。子育ては楽しいなと思う人が増えれば、産みたい人が産める社会になるのではと思っています。

市長:日野市は子育てしたいまち、しやすいまちを目指してきました。先ほど申し上げましたように、今年動き出す「みらいく」を中核に新しい展開が始まります。
 子どもが安心して育つことができるためには、社会が構造的に変わる必要があると思います。子育てしている方に安心感を与えられるかは、行政として大きな課題です。これは一朝一夕でできる話ではないですが、さまざまな施策を市民の方に働きかけ、浸透させていく。さまざまな方にご指導をいただきながらやっていきたいと思っています。

高祖:ぜひよろしくお願いします。期待しています。

市長:本日はありがとうございました。

対談の様子の写真

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