ごみ改革
平成12年10月に行った日野市の「ごみ改革」は、1.ダストボックスを廃止し、原則戸別収集方式に変更 2.有料指定袋制によりごみを有料化したことにより、ごみ量の半減を達成しました。その後も減量効果を維持し、全国から注目されました。「ごみ改革」について、経緯や概要を紹介します。
当時日野市では、三多摩地区において「不燃ごみとリサイクル率がワースト1」とごみ問題が大きな課題でした。平成12年、「環境にやさしいまちひの」を目指して、市民と行政が一体となった「ごみ改革」に取り組みました。
ごみは一人一人が出すもの・ごみ減量の主役は市民であることから、市民との合意を最重要とし、600回以上の説明会を実施しました。
実施後には、ごみ収集量(資源物を除いた可燃ごみ+不燃ごみ収集量)は45%減、資源回収量は3.3倍、ごみ収集量+資源物回収量は25%減を達成しました。※ごみ改革を行ったのが平成12年10月のため、前後比較は11年度と13年度で行っています。以下同様
ごみを有料化すると、直後は減少するが再びもとの推移に戻ってしまう(リバウンド)ことが、よく言われています。しかし、日野市ではこの改革直後のごみ量を引き続き保ち、以降は現在に至るまで、さらに減量を達成しています。これは、市民の皆さんがごみ行政にご理解いただき、日々減量の努力をしてくださっている成果です。
1 日野市の規模と背景(平成12年時点)
人口 約16.5万人 世帯 約7万世帯
面積 27.53平方キロメートル
都心から30キロの三多摩地区に位置し、首都圏のベッドタウンとして発展している都市です。
多摩地区のごみは、一部を除いて二ツ塚最終処分場へ埋め立てを行っていますが、この処分場がこのままでは、平成25年には満杯になってしまいます。次の処分場候補地はなく、多摩地区で深刻な問題となっています。そういった背景からも、多摩地区は、全国的に見ても、ごみ問題への取り組みが非常に活発な地域です。
2 なぜ「ごみ改革」をしたか?
日野市においてなぜ改革が必要であったか?その主な要因は次の二つです。
(1)ごみ量が非常に多く、リサイクルも進んでいない
平成9年度における不燃ごみ量は多摩地区で最も多く、ワースト1
リサイクル率も最も低く、ワースト1
(2)最終処分場への配分搬入量の超過 (搬入停止、追徴金発生の危惧)
日野市のごみは、清掃工場で中間処理(焼却、破砕)した後、東京都日の出町にある二ツ塚最終処分場に埋め立てをしています。この処分場は、日野市を含めた多摩地区の25市1町で負担金を出し合い運営している、東京都三多摩廃棄物広域処分組合が所有しているものです。平成25年には満杯になってしまうこの処分場では、各市町村ごとに配分量(埋め立てできる量)が厳しく決められています。
日野市では、ごみの増加に伴って最終処分量も増加し、平成10年度には、最終処分場の配分量を上回り、現状のままでは、数年後に億単位の追徴金を支払わなければならない危惧がありました。
3 市民提案を反映した「ごみ改革」を決定するまでの経緯
日野市民は、もともと環境問題についての意識が高く、平成6年には市民から「環境基本条例」制定の直接請求があり、平成7年に条例を制定しました。
また、市民委員が参加する「廃棄物減量等推進審議会」において、平成7年と9年に「ダストボックスの廃止、収集費用の有料化など」の答申が出されたが、この時点では市民合意が得られず実施には至りませんでした。この後もごみ問題は、さらに悪化しました。
平成11年には、「環境基本計画」を市民と行政の協働作業で策定するため、市民参画を呼びかけ、109名の市民と検討を行いました。「収集方法の変更」「収集費用の有料化」などについても議論し、市民提案を含めた市民の言葉(思い)をそのまま計画に載せました。
再度「廃棄物減量等推進審議会」から「収集費用の有料化」について答申を得て、平成12年3月の定例市議会において、「収集方法の変更や収集費用の住民負担」を内容とする条例改正がなされました。
4 ごみ減量・リサイクルを進めるための方策
(1)収集方式の見直し ダストボックス収集方式から原則戸別収集方式へ
昭和44年に導入したダストボックス方式は、「24時間いつでも何でも出せる」市民にとっては便利な方法でした。一方、分別・資源化に不適当、設置場所周辺の生活環境が悪化、交通の支障になるなどの問題点がありました。
戸別収集方式に変更後は、敷地内に出すことで、排出者が収集されるまで管理するようになりました。ダストボックスと違って目につくので、分別も徹底されるようになりました。とくに、資源物を戸別収集することにより、重い新聞などを拠点まで運ばなくてもよくなり、出しやすくなりました。
(2)収集費用の住民負担 有料指定袋制による有料化
ごみ出しには、市が指定する有料ごみ袋を使用していただくことになりました。ごみを減らせば減らすほど負担が少なくてすむ、分別をして資源物にまわすと負担が少なくてすむということから、ごみ減量に効果的な経済的手法として導入しました。
このごみ袋の価格は、全国的に見ても、トップランクに位置する高さです。この価格は、最もごみ減量に効果的だと考えられる価格として、設定したものです。1世帯当たり月500円の負担だと、負担になりすぎず、かつ、ある程度負担に感じてもらえる額だと見込みました。
1世帯あたり月500円の負担÷12回(可燃・不燃)=約40円(中袋20リットル)
家庭系ごみ袋
- ミニ袋(5リットル相当) 1セット(10枚) 100円
- 小袋(10リットル相当) 1セット(10枚) 200円
- 中袋(20リットル相当) 1セット(10枚) 400円
- 大袋(40リットル相当) 1セット(10枚) 800円
※ミニ袋は、平成13年4月から、市民の要望により用意しました。
5 改革導入の手法
「ごみ改革」を成功させるためには、市民の合意形成が不可欠でした。
(1)説明会の実施
平成11年5月~平成12年9月まで、市長を先頭にした説明会や早朝駅頭での訴えなど、延べ600回以上の説明会を実施し、約3万人の市民に直接説明し、理解と協力を求めました。説明会では、「環境基本計画」の策定に関わるなど、環境活動に積極的な市民から「ごみの減量にはダストボックスを廃止し有料化が必要」「自分たちのライフスタイルを見直そう」などの発言があるなど、市民間で啓発する場面がしばしば見受けられ、このような市民の後押しが、市民の合意形成に効果的でした。
(2)広報紙や情報誌を通じてのPR
「広報ひの平成12年5月15日号」のごみ改革特集では、「ダストボックスを廃止し、原則戸別収集に変わります」を広報しました。
ごみ情報誌「エコー」を平成11年5月に創刊、全戸配布しました。創刊号では、「緊急事態!今日野のごみは」として、ごみ問題の現状とごみ改革の内容を掲載し、市民に「ごみ改革」の必要性を訴えました。ごみ情報誌「エコー」は、年2回のペースで現在も発行しています。
広報ひの ごみ情報誌「エコー」
(3)ごみ減量実施対策本部の設置など
市庁舎に「ごみ減量実施対策本部(市長公室が事務局)」を設置し、市職員によるボランティア151名の参加を得て、3名1班の編成により、自治会などへの説明会や集合住宅の排出場所などの調査を実施しました。
また、同時期に市役所本庁舎でISO14001認証を取得し、本庁舎のごみを60%削減し、市職員の意識改革も「ごみ改革」の推進に効果的でした。
6 収集方式の変更内容
項目 |
ごみ改革前(ダストボックス方式) |
ごみ改革後(戸別有料収集方式) |
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ごみ・資源物の排出方法 |
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収集回数 |
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資源物回収品目 |
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排出場所の管理方法 |
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事業所ごみの収集 |
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7 現在のごみ収集方法(日野市を10地区に分けている)
可燃ごみ |
原則戸別収集 市指定収集袋(有料・緑色)
家庭系 大袋40リットル=80円 (1枚)
事業系 |
週2回 月曜・木曜コースまたは 火曜・金曜コース |
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不燃ごみ |
原則戸別収集 市指定収集袋(有料・橙色) 以下同上 |
週1回 月曜から金曜日のいずれか1日 |
有害ごみ |
原則戸別収集(無料) 乾電池等はポリ袋、蛍光灯は割れないように |
週1回 不燃ごみと併せて |
粗大ごみ |
原則戸別収集(有料) |
随時(品目別料金シール貼付制) |
資源物 |
原則戸別回収(無料) 9品目回収(新聞、雑誌・雑紙類、牛乳パック類、古着・古布類、びん、かん、ペットボトル、トレー類) |
2週に1回 |
8 ごみ改革に伴う取り組み
減免措置 |
生活保護受給世帯、児童扶養手当受給世帯、特別児童扶養手当受給世帯 老齢福祉年金受給世帯 母子福祉年金又は準母子福祉年金受給世帯 |
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まちの分別屋さんの発足 |
ごみ・資源の分別相談、不法投棄の監視を実施する。(平成12年4月発足 現在は「ごみパトロール隊として4名で活動中) |
ごみの分け方・出し方ビデオ |
市役所等で上映していました。(現在はしていません)希望自治会に対し、1本を無料配布 |
ボランティア清掃袋 |
道路や公園などの公共の場を清掃する際のボランティア袋(45リットル、20リットルの2サイズ)を無料配布 |
配慮が必要な世帯への専用排出容器等貸与・配布 |
高齢者や障害者をお持ちの方で、ごみ出しが困難な世帯に、「指定日外排出用ごみ・資源収納容器」の貸与(指定日以外でもごみの収集、資源物の回収を行います) 分別が困難な高齢者等にハンディキャップ・シールの配布(分別が不十分でもごみの収集・資源物の回収を行います) |
カラスよけネットと資源容器の貸与※ |
集合住宅に対して貸与(現在は貸与していません) |
おむつ専用収集袋※ |
紙おむつ専用収集袋(30リットル、20リットルの2サイズ)を無料で配布 |
転入者への指定袋サンプル、「ごみ・資源分別カレンダー」配布 |
新たに転入した世帯を対象に、指定袋のサンプルと「ごみ・資源分別カレンダー」を転入届提出時に配布 |
ミニ袋を用意※ |
平成13年4月から5リットル10円のミニ袋を用意 |
事業系小袋を用意※ |
排出量の少ない事業者向けに小袋(15リットル1枚100円)を用意 |
剪定枝のリサイクル※ |
市内20箇所(公園等)で剪定枝を無料収集し、CNG車でその場でチップ化。公園の路地等に利用する他、希望者にも配布。 |
※ 市民からご提案いただいたもの
9 ごみ改革の成果と分析
改革後には、ごみ収集量は45%減、資源物回収量は3.3倍になりました。ごみ収集量+資源物回収量も25%減少しており、リサイクルだけでなく、ごみの発生抑制・発生回避がすすみました。
最終処分場への埋め立て実績においても、配分量を下回っており、結果として、追徴金を支払わずにすみ、逆に還付金をもらうほどになりました。
改革前後における日野市のごみの実態は、下記のように顕著な改善が見られました。
可燃ごみ | 不燃ごみ | リサイクル率 | |
---|---|---|---|
平成11年度(ごみ改革直前) | ワースト4(760.7グラム 人・日) | ワースト1(193.7グラム 人・日) | ワースト1(13.8%) |
平成13年度(ごみ改革直後) | ベスト2(496.1グラム 人・日) | 14位(92.8グラムグラム 人・日) | 7位(29.6%) |
平成14年度 | ベスト1(496.6グラム 人日 | 18位( 95.7グラム 人日) | 10位(30.0%) |
平成15年度 | ベスト1(487.9グラム 人・日) | 18位(99.2グラム 人・日) | 10位(30.0%) |
※財団法人 東京市町村自治調査会資料「多摩地域ごみ実態調査」より
※収集量の他、許可業者搬入なども含まれるクリーンセンターでの処理量
※リサイクル率は、収集量の他、集団回収での回収量も含まれている
※平成13年度は、不燃ごみ施設火災のため、異常値となっている
ごみを有料化すると、直後は減量するがその後もとに戻ってしまう「リバウンド」が、日野市では顕著ではありません。これこそ、日野市の「ごみ改革」の真の成果があります。
年間排出量、ごみ処理費データ
このようなごみ減量を達成し、引き続きごみ量を保っている理由を、当課では次のように考えています。
(1)市民の合意を形成出来たため
- 市民の環境意識はもともと高かったが、ごみ改革をきっかけに、ごみへの意識が高まり、減量の必要性に気づき、行動した
- 改革後もごみ情報誌「エコー」で啓発、マイバッグ運動では市民から市民へ呼びかけを行うことで、ごみの発生抑制・発生回避が広まっている
- 市民の提案を受け、可能な限り施策へ反映。最近では、転入者への排出指導やごみについての相談を受けている「ごみ相談窓口」を本庁舎に設置など
(2)有料化の方法が適正だったため
- 従量制で有料化したためごみを多く出せば出すほどお金がかかり、減らせば減らすほど負担が少なくてすむことにより、減量がすすんだ
- 価格設定が適正であったためアンケートの結果では、「少し負担に感じる」が過半数を占めた。価格が低すぎて負担感がないとリバウンドがおきやすい・ごみは有料、資源物は無料にしたため分別を徹底して資源にまわせばまわすほど負担が少なくてすむことにより、リサイクルがすすんだ
(3)ダストボックスから戸別収集方式に変更したため
- ごみが目に見える・収集されるまでは排出者責任となったおかげで、ごみを減らそう、排出のルールを守ろう、分別を徹底しよう、という意識が働くようになった
- 分別出来ていないごみを収集しないようになった
- 資源物が出しやすくなり、リサイクルが進んだ
10 「ごみ改革」後の取り組みと今後の課題
(1)発生抑制・発生回避の啓発
ごみ改革後も一貫して、分別徹底しリサイクルをすすめるだけでなく、ごみの発生抑制・発生回避を啓発しています。
年2回発行のごみ情報誌「エコー」、「ごみ・資源分別カレンダー」では、市民のページを設け、ごみ減量推進市民会議のメンバーが企画・編集しています。市民から市民へ呼びかけることで、高い啓発効果が期待されます。
広報ひのでは、年に1回ごみの特集を組んで現状や課題について知らせています。
市民・行政・事業者3者が協働して、マイバッグ運動に取り組んでます。毎年5月・10月をマイバッグ持参強化月間と定め、マイバッグ持参出口調査を行い、レジ袋を断るよう呼びかけています。レジ袋を断ることをきっかけとし、ごみの発生回避に取り組むよう啓発することが運動の目的です。
(平成21年から「レジ袋無料配布中止に向けた協働会議」に活動を移行)
(2)減量・リサイクル
今後の課題は、生ごみと事業系ごみの減量、プラスチックの資源化です。
生ごみの減量
改革後、可燃ごみの半分を占める生ごみを減らすことが課題となっています。
自治会などで、堆肥化容器で生ごみを堆肥化し、地域循環させる取り組みを行っています。「小さな循環」の仕組みづくりを検証しています。
事業系ごみの減量
家庭系のごみの減量はすすみましたが、個人商店などのごみ、許可業者を通じてクリーンセンターに搬入されるごみの減量が課題です。
個人商店など少量排出事業所は、市指定事業系ごみ袋での排出がルールですが、家庭系ごみ袋で排出されるルール違反が目立ちます。年に数回、職員が事業所に直接出かけて行って調査や排出指導を行っています。今後、さらに効果的な方法を検討しています。
クリーンセンターにごみを搬入する許可業者に対しては、検査を頻繁に行い、適正かどうかチェックと指導をしています。
プラスチックの資源化
不燃ごみのうち約8割を占めるプラスチック類ごみの新たな資源化により、焼却ごみ量を削減し、環境負荷の低減および資源化率の向上を目指すため、市では2020年1月からプラスチック類ごみの収集・資源化を行います。
新たな分別項目となるため、市民の皆さんにはお手数をおかけしますが、分別の徹底にご協力をお願いします。
このページに関するお問い合わせ
環境共生部 ごみゼロ推進課
直通電話:042-581-0444
ファクス:042-586-6606
〒191-0021
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