「諸力融合」と主要3戦略の概要
日野市は「諸力融合」を目指して、さまざまな官民連携を進めています。また、長期的な視点に基づき、これからのまちづくりの方向性として、「人口バランス・定住化促進戦略」「産業立地強化・雇用確保戦略」「ヘルスケア・ウェルネス戦略」の3つの戦略を策定しました。
「諸力融合」とは?
「諸力融合」とは、大坪市長が平成26年度の所信表明にて始めて使用した造語です。
この言葉には、日野市の未来への責任を共有するすべての人や団体【諸力】が、互いの立場を尊重しながら協力し、それぞれが持つ力をつなげていく【融合】ことで、1つの大きな力となって困難を乗り越え「可能性に満ちた未来を切り拓いていきたい」という想いが込められています。
今後も市民をはじめ、民間企業や大学、NPO等の諸団体といった地域に関わる多様な主体との「諸力融合」によって様々な地域課題に取り組んでいきます。
1.長期的な戦略策定の背景
(1)「戦略」を策定する理由
従来、市の施策は10年を目安に作成してきました。しかし、人口減少や少子高齢化をはじめとした構造変化を伴う課題が見えてきた今、長期的・大局的に全体を捉え、市全体の方向性を考えていかなければなりません。
そのため、日野市では以下のような想定される将来課題に対応するため、3つの戦略を策定し取り組みを進めていきます。
(2)人口減少と少子高齢化
人口減少について
現在の日本は、これまでどの国も経験したことがないような少子化、超高齢化に向かっています。
2014年現在、日野市の人口は緩やかな増加基調が続いていますが、平成25年3月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の市町村別人口推計によれば、2020年頃までには減少に転じると予測されています。
高齢者の増加と生産年齢人口の減少
人口推計によると、日野市の人口は今から約25年後の2040年には、2010年と比較すると約1万5,000人減少し、高齢化率は2010年の1.5倍となる34%、社会の中核を担う生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は2割減の55.4%にまで低下するとされています。
【図1】日野市の人口構成割合の予測
高齢者人口と生産年齢人口の関係
このままのペースで少子化と超高齢化が進んでいった場合、2040年に現在の私たちと同じような生活を送り、同等の行政サービスを受けるためには、2010年の倍近くの負担が生産年齢人口にかかってしまうこととなります。
今の私たちにとっての“当たり前が当たり前でなくなる”
という時代がそう遠くない未来に迫っています
人口構成のアンバランス化
下記の2010年と2040年の人口構成図の比較からも分かるように、高齢化がピークを迎えると言われている2040年は生産年齢人口の大幅な減少が予想されています。
さらに、財政的な支えとなる生産年齢人口が減少する一方で、高齢化によって医療・介護等の社会保障費は増加し続け、市の財政的な不均衡をもたらすことが懸念されています。
【図2】日野市の人口構成図(2010年)
【図3】日野市の人口構成図(2040年予想)
【図2】及び【図3】からも分かるように、人口減少と少子高齢化によって高齢者と現役世代のバランスが悪化していくことが予測されています。今後求められるのは、単純な人口増加策ではなく、ターゲットを明確にし「地域間」「世代間」の人口バランスを維持していくことです。
つまり、住宅取得層や子育て世代といった今後減少すると予測されている世代をターゲットとし、そのターゲットに選ばれ、住み続けられるまちづくりを行い、適正な世代間のバランスを維持していかなければならないのです。
人口の適正な世代間バランスを維持していくことが大切です
(3)大規模工場の相次ぐ移転と産業の空洞化
近年、日野市では地域雇用の担い手である大規模工場の移転・撤退が相次いています。
法人税の減収という財政的な問題に加え、雇用の場や機会が失われてしまうことで、職と住の乖離が生まれ、地域の賑わいや活力が失われてしまうということも問題となります。
地域経済の活性化を図ることで、市内の立地企業の成長発展を支援していく共に、暮らしの近くで安心して働ける魅力的な雇用・就業環境の整備も進めていくことで職住近接の都市環境を実現させていきます。
地域経済の活性化と
働く人にとって魅力的な就業環境の整備が必要です
(4)医療・介護費等の増加と健康の大切さ
「(1)人口減少と少子高齢化」で記載した通り、今後は人口減少と少子高齢化の進行はほぼ確実な状況です。また、高齢化に比例して医療費の増加も予想されています。
【図4】年齢ごとのレセプト1件あたりの医療費
人口減少・少子高齢化が進むほど、福祉サービスを必要とする機会は増加し、福祉や医療にかかる費用も増大することが予想されます。しかし、一方では地域における提供可能なサービスの量は人手不足により減少し、福祉や医療に係る費用を生産年齢人口だけで負担していくことは難しくなります。
【図5】少子高齢化の進行と医療費等の関係
高齢化の進展に伴う医療や介護費用の増加を少しでも減らすことが将来を担う世代のためには必要となります。また、高齢になってもいつまでも「元気に」「楽しく」「生き活き」と生活していけるということは幸せなことではないでしょうか。
そのためには、日常生活の中に生きがいを見つけたり、運動習慣を持つことが必要です。
高齢者が地域社会の担い手として、
生き活きと働ける社会を創っていくことが必要です
市民一人ひとりが、自らの価値観に基づいて
「健康であること」の大切さに気づき、
自ら取り組んでもらうことが必要です
2.まちづくりの方向性と3戦略
今の私たちの暮らしや生活環境を次世代に引き継いでいくためには、人口減少や少子高齢化がもたらす様々な困難をこの地域の未来に対して責任を持つすべての人々と共有し、共に力を合わせ乗り越えていかなければなりません。
また、来るべき未来を予測しながら、中長期的な視点に立った施策展開やまちづくりも必要となってきます。
(1)3戦略とは?
地域戦略室では、想定される日野市の将来課題を踏まえて、これからのまちづくりの方向性として3戦略を策定しました。
選ばれ・住み続けられるまちであるために
地域経済の持続的な成長と魅力的な就業環境を実現するために
誰もが健康で暮らせるまちであるために
(2)3戦略の関連図
3戦略は相互に関連しています。戦略相互の関係や効果を意識しながら順次取り組んでいきます。
3.2020プランとの関係
日野市には、平成23年3月に策定された「第5次日野市基本構想・基本計画(以下:2020プラン)」があります。この2020プランは、日野市の最上位計画となりますが、策定から数年が経過しており、当時は想定されていなかった法改正や社会情勢の変化があります。
3戦略ではそれらに対応すると共に、2020プランの計画期間(平成23年度から平成32年度)を超える中長期的な視点を補完しています。
4.3戦略の概要
(1)人口バランス・定住化促進戦略
「いつまでも」あるいは「いつかきっと」住みたいまちとして
誇りと愛着の持てるまちづくりにより、都市の持続性につなげていきます。
1.人口動態の情報集積・分析による地域特性の把握と利活用
- 人口の流出入状況等の把握
- 特性や課題を踏まえた政策判断や施策展開への応用
2.地域の魅力の再認識と認知度を高めるプロモーション
- 地域固有の魅力の再認識による日野市に対する誇りや愛着の醸成
- 魅力の発信による認知度向上と市外からの来訪のきっかけづくり
3.生活環境の維持・向上と将来を見据えたコンパクトなまちづくり
- 居心地の良い生活環境の実現
- 将来の社会状況を見据えたコンパクトなまちづくり
4.就業環境の魅力向上と安心して働ける地域支援体制の強化
- 性別や年齢に関わらず、暮らしの近くで安心して働ける環境づくり
- 子育てや介護を地域全体で支える体制の構築
5.体験と活動機会の提供を通じた「ふるさと日野」の醸成
児童や学生に日野市の魅力を肌で感じる機会を提供することで「ふるさと日野」に対する愛着を育む
(2)産業立地強化・雇用確保戦略
新たな価値が創出される環境を整え、持続的な成長を実現し、
地域の魅力を高めることでチャレンジする企業や人材を集積させ、
「地域の活性化」と「多様で質の高い雇用・就業環境」を創り出していきます。
1.諸力融合による価値共創の枠組構築
- 多様な主体が互いの立場や利益を尊重しながら連携・協働できる関係の構築
- 多様な主体の連携や協働による社会的課題の解決と地域価値の向上
2.産業立地特性の強化と支援
- 日野市における産業の将来像や方向性の明確化
- 設備投資への支援や事務手続の効率化による地域経済の活性化
3.価値共創機会の提供と人材のネットワーク化
- 目的を共有した多様な主体に対し、連携・協働する場や機会の提供
- 人材のネットワーク化による持続的な地域の成長と活性化
4.行政保有データの公開と活用
市が保有する公開可能なデータの提供と社会課題の解決に向けた連携資源としての利活用促進
5.就業環境の魅力向上支援
- ライフスタイルに応じた働きがいを感じることのできる就業環境の魅力向上に対する支援
- 市内産業の活性化と雇用の質の向上
(3)ヘルスケア・ウエルネス戦略
皆がより良く生きるために「健康であること」の意義を
自らの価値観に基づいて捉えてもらうと共に、
健康の大切さに気付いてもらうための
きっかけ作りや行動する機会、継続のサポートを行い、
誰もが健康で生き続けられるまちづくりを目指します。
1.国保・医療レセプトデータの利活用
レセプトデータ等の活用による発症予防、重症化予防
2.産学官金連携による社会的な健康施策への取組
多様な主体の連携や協働による社会的課題の解決と地域価値の向上
3.歩きたくなるまちづくりの推進
出会いや交流、生きがいを見つけるきっかけの提供による歩く機会の創出
4.住み慣れた地域で生き看取られる暮らし
福祉サービスと医療連携による市民が住み慣れた地域で暮らせる環境の構築
5.その他、健康維持、健康づくりに関する取組
- コミュニティ活性化分野
- 生きがい(就労)分野
- 運動(日常行動)分野
- 生活(食生活)分野
- 医療・介護分野
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