みんなのふるさとこぼれ話86 配給米の配達自転車

日野市郷土資料館の展示室に1台の自転車が展示されています。昭和20年代後半の丸石自転車(現・丸石サイクル)製で、後輪のカバーに「日野町食糧販(売所)」とペンキで書かれていた跡が残っています。
万願寺に住んでいた土方勝さん(昭和15(1940)年生まれ)は、昭和31年に日野宿にあった米屋に勤め始めました。この自転車は、米の配達に使うため店で買ってくれたもので、土方さんの1カ月の給料のおよそ10倍したという高価なものでした。土方さんの仕事は、割り当てられた配給米を各家に振り分けて数日おきに配達することでした。家ごとに決められた米袋に配給米を入れ、荷台に竹で編んだ丈夫なカゴをつけ、その中に米袋を入れて運びました。
太平洋戦争中の昭和17年(1942)、食糧管理法が制定され、米や小麦など米穀類の配給を受けるためには世帯ごとに交付された購入通帳が必要でした。戦後も政府の統制による配給制度は続きましたが、昭和44年に一部自主流通米が出回るようになり、米穀通帳は昭和57年に廃止されました。
この自転車で配達したのは10年ほどで、その後はオート三輪などに代わっていきました。
現在の自転車に取り付けられている荷台は、郵便局で使用していたものを再利用したもので、ところどころに赤い色が見えているのはそのためです。自転車は日野宿にあった猪鼻輪業に長年預けられていましたが、自転車店の閉店を機に、令和元年(2019)郷土資料館に寄贈されました。日野の歴史の一端を物語る自転車に会いに来て下さい。
広報ひの 令和7年(2025)7月号 掲載
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