◎スポーツとセクシュアル・マイノリティ 性の多様性がさまざまな場面で取り上げられるようになった時代の中、 新型コロナウイルスが世界にまん延した影響で、今年に延期された東京2020オリンピック・パラリンピック。 令和2年12月1日号・令和3年1月1日号に続き、 スポーツの世界とジェンダーについて研究されている現日野市男女平等推進委員で 東京都立大学ダイバーシティ推進室特任研究員の藤山新さんによるコラムを掲載します。 ID:1015892 [お問い合わせ]男女平等課(電話番号042・584・2733/FAX042・584・2748) Vol.3(最終回)「セクシュアル・マイノリティ当事者のスポーツ参加を阻むもの」 前回まで、主にオリンピックなどの場面を中心に、セクシュアル・マイノリティとスポーツの関係についてお話してきました。 しかし、そうしたいわゆるエリートレベルのスポーツ場面だけではなく、 学校体育や部活、地域のスポーツクラブ、日常的なスポーツ活動など、私たちにとって身近なスポーツ場面においても、 同じようにセクシュアル・マイノリティ当事者がスポーツに参加しにくい状況があります。 例えば、体育や部活の場面では男女に分かれて活動することが多いですが、 自身の性別に違和感を抱えている人や、性自認が明確になっていない人にとっては、 自分の希望するグループでの活動ができなかったり、どちらのグループに参加するべきか分からなかったりすることから、 活動に参加することが難しく感じられたりすることもあります。 また、日常的なスポーツ活動の場面でも、 例えばウェアや用具が「男らしさ」「女らしさ」を強調するようなデザインや色づかいになっている場合など、 非当事者にとってはもしかしたら「ちょっとしたこと」と感じられるかもしれないような事柄が、 当事者にとっては決してちょっとしたことではなく、スポーツへの参加を遠ざける要因となっている場合も少なくありません。 もちろん、セクシュアル・マイノリティ当事者のすべてがスポーツへの参加に困難を抱えているわけではありませんし、 また非当事者であっても、さまざまな理由からスポーツへの参加に困難を感じる人は少なくありません。 結局のところ、セクシュアル・マイノリティ当事者がスポーツに参加しやすい環境をつくるということは、 誰かを特別扱いするのではなく、 「性」という視点から、誰もがスポーツに親しむことができるような環境を整えることを目指す試みに他ならないのです。 そうした観点から、 日本スポーツ協会では『体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン』を作成・公開しています(右記QRコード)。 (https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/SOGIguigeline/jspo_optimal_sexual_diversity_bilingual_low2p_20200930.pdf) この中で、特に押さえておいてほしい基本的なポイントを 「スポーツに関わるすべての人が知っておくべき8つのこと」としてまとめました。 スポーツの指導者をはじめ、さまざまな立場でスポーツに携わる皆さまには、まずはこの8つのポイントに目を通していただき、 特に1~4を日々の暮らしの中で心に留めておいていただければと思います。 8つのポイント「スポーツに関わるすべての人が知っておくべき8つのこと」 1.性には多様性があることを知る 2.性の多様性を尊重する 3.LGBTや性の多様性に関する正しい知識や情報を自ら得る努力をする 4.指導者自身がジェンダー・性自認・性的指向に関する考え方・発言に自省的である 5.本人が「どうして欲しいのか」の希望を聞き、それを尊重する 6.アスリート自身が相談できる場所や情報を提供できるようにしておく 7.カミングアウトを受けた場合には、自分自身の判断だけで行動を起こさず、本人の意向を聞く。 アウティングになることもあるので注意する 8.相談を受けた場合に、病院に行くことや診断書の提出を安易に求めない ■藤山新(ふじやましん) 東京都立大学ダイバーシティ推進室特任研究員(2015年4月から) 第8・9期日野市男女平等推進委員(2018年7月から)