◎日野市認知症を知る月間 認知症を知る座談会 【後援】日野市医師会、日野市歯科医会、日野市薬剤師会 ID:1015151 [お問い合わせ]高齢福祉課(電話番号042・514・8496) ※誌面の都合上座談会の一部を編集して掲載していますが、 市ホームページでは、本座談会のより詳細な様子を閲覧することができます。 ここには書ききれなかった深いトークをぜひご覧ください 市では、9月21日(祝)の「世界アルツハイマーデー」に合わせて、毎年9月を「認知症を知る月間」と位置付けています。 第7回目となる今年度は、認知症のご家族を長年にわたって支えてこられた家族介護者の方(以下、「家族」という。)、 医療面のみならず社会的な側面からも認知症の方を支援されている 多摩平の森の病院(※1)認知症認定看護師(※2)の方(以下、「看護師」という。)、 地域にお住まいの高齢者の困りごとの総合的な相談窓口である地域包括支援センター(※3)職員の方(以下、「包括」という。)が、 「認知症の方をこれから地域でどう支えるか」について語り合った座談会の様子をお届けします。 (進行:市高齢福祉課職員) 市職員 本日はよろしくお願いします。早速ですが、まずは家族介護者の方へ質問させていただきたいと思います。 長年にわたりご家族を支えてこられて、 これまで地域の方のちょっとした気遣いで「うれしかった、ありがたいと思った、もしくは助かった」と感じたことはありますか? ◆母の介護がきっかけで、近所の方にも声を掛けるようになった 家族 私は母親を介護しています。7年前に徘徊(はいかい)が始まりました。 買い物に行って、全然帰って来なくて、地域包括支援センターの方や市役所に探してもらったのが始まりでした。 これまでもいろいろ忘れることはありました。 当初は、年相応の物忘れではないかと医師からも言われており、認知症なのか分からないところからがスタートでした。 最初は地域の関わりというのは特に無かったのですが、 地域包括支援センターとの関係ができたことがきっかけで、「認知症家族介護者交流会(※4)」を紹介され、 そこから地域とのつながりができ始めました。 母親が出掛けて行ったときに近所の薬局の方が母に声を掛けてくれたり、立ち寄ったことを連絡していただくことがあり、 ありがたいと思いました。 このような経緯もあり、最近では近所で「おかしいな?」と思った方には自分でも声を掛けるようになりました。 看護師 お話を聞いていて、いろんな人とお話しする機会があったり、つながっていたりすることが大事であると思いました。 さらに、「おや?」と思った方に声を掛けてあげられることがとても重要で、 こういうことが増えていけば、地域の中で認知症の人を支えていけるんだろうな、と感じました。 市職員 先ほどのお話の中で「認知症なのか、それとも年相応の物忘れなのか、判断がつかない時期があった」とのことでしたが、 そこに違いはあるのでしょうか。 看護師 例えば、「朝食に何を食べたか忘れてしまう」ことは、加齢に伴って誰にでも起こり得ることですが、 認知症の症状の場合、「朝食を食べたこと自体」を忘れてしまったり、忘れたことを認められなかったりします。 また、加齢の物忘れに関しては何かヒントがあれば思い出せることもありますが、 認知症の場合、それができないことも多く、この辺りに違いがあるといえます。 ◆認知症の方の言動にも、必ず何らかの意図がある 市職員 その他医療的な側面から、認知症の方の特徴や考え方などを教えていただけますか? 看護師 認知症の方の言動には、ご本人の中で何らかの意味があると考えられています。 それは必ずしも、周囲の方が理解できるわけではありませんが、ご本人は意味があって行動しているわけです。 徘徊など、認知症の方の言動はときに周囲の人を困らせてしまう場合もあるわけですが、 こういった言動にしても、ご本人にはそうする意味が必ずあり、 ご本人も自身の言動と現実、周囲とのミスマッチに困っているわけです。 言動の意味が何なのかを考え、推測してみることが重要であり、 同時に、ご本人にとって「安心できる場所」を作ってあげることや、日常を見直していくことも大切です。 将来的には、徘徊をしても、認知症の方が一人で歩いてもよい社会や地域になることが理想だと思います。 そのヒントが、家族介護者の方のお話の中にあるように思いました。 市職員 地域で日々、高齢者の支援やお困りごとの相談を受けている「地域包括支援センター」から、 認知症に関するお困りごとに対してご紹介いただけそうな日野市のサービスや、 地域で認知症の方を受け入れていく際のアドバイスなどあればぜひ教えてください。 包括 日野市にはさまざまなサービスがありますが、 例えば徘徊について、「認知症徘徊高齢者SOSネットワーク(※5)」に登録されると、 徘徊発生時に市役所・警察・地域包括支援センターおよび協力市民・協力事業所が情報を共有し、 早期の捜索・発見につなげることができます。 そのほかにも「徘徊高齢者等探索サービス(※6)」という事業があり、 GPSを利用して行方不明になってしまわれた認知症の方を探索することができます。 また、地域で認知症の方を受け入れていくためには、 地域へ「ご家族の身内が認知症である」ことを公にすることが方法の一つといえます。 ところが、例えば「家族が糖尿病だ」など病気のことは比較的打ち明けられやすいですが、 認知症となると、やや公にするハードルも高いようです。 そのようなときは、まずは同じ悩みを抱える仲間同士の集い「認知症家族介護者交流会」などにご参加いただくのも良いと思います。 市職員 日野市では、令和2年度より、 「徘徊高齢者等探索サービス」事業に、「日常生活賠償補償(※7)」を付帯したサービスを開始しました。 GPSを利用いただくことで、万が一に備えた体制もできつつあります。 ところで、その他市民が認知症について知ることのできる講座などはありますか? 包括 日野市では、各地域で「認知症サポーター養成講座(※8)」を開催しています。 認知症について知っていただき、認知症の方、介護をされる方へのさりげない応援団になっていただく取り組みです。 この講座は、小・中・高・大学生を対象として開催することもあり、若い人にも認知症の理解を深めていただく機会が生まれています。 認知症の方を支える学びは、全国でも実施されており、世界的にも取り組みが広まっているところです。 ◆「自分ごととして認知症を考える」ことは、 自分が認知症になったときにも豊かに暮らしていける環境を作っておくことに通じる 市職員 最後に、専門職のお二人から、 地域の皆さまが認知症の方を「同じ市民」として受け入れるに当たっての心構えについてアドバイスいただけますか。 看護師 まず、「どうして地域で支えることが必要か」を考えますと、やはり認知症の方が増えているわけです。 2025年には700万人(65歳以上の5人に1人)に達すると言われています。 ですので、認知症の方が地域の中で暮らすことが当たり前、という世の中がやってきます。 認知症の方につらく当たってしまうと、逆に症状を悪化させてしまう場合もあります。 地域の方々には、温かく見守っていただきたいです。 今は地域の中にも専門の支援機関がたくさんあります。 地域の方には、支援者や支援機関について知っていただき、認知症のご本人やご家族のことを考えていただきたいと思います。 また、認知症は誰でも発症する可能性があります。 私にもあなたにも発症する可能性があるわけです。 「地域で支える仕組み」をみんなで作ることは、 いつか自分が認知症になったときのために「住みやすい社会を作っておく」ことともいえるでしょう。 包括 認知症になられたご家族のことを公にするのは恥ずかしい、と聞きます。 その中には、周囲の偏見であったり、正しくない理解があるようにも思います。 認知症はれっきとした病気の一つなんですね。 「病気になったことは、隠すことではない」ということを皆さんに知っていただきたいと思います。 また、ご近所で「なんか変だなぁ~」など、少しでも気になる高齢者について、 気軽に相談できる地域の窓口「地域包括支援センター」をもっと市民の方に知っていただきたいと思います。 それが地域力を高めていく一つのきっかけにもなると思います。 市職員 日野市としても、認知症の方、そのご家族、地域住民の皆さま、市内でお勤め、または通学されている皆さまなど、 地域にいるすべての方が自分らしく暮らせるまちづくりを進めてまいりたいと考えています。 皆さま、本日は非常に貴重なお話をいただき、本当にありがとうございました。 ※1多摩平の森の病院 認知症専門の相談員による医療相談や認知症の診断、状況に応じた適切な医療機関の紹介などを行う、 東京都が指定する認知症専門の医療機関(地域連携型認知症疾患医療センター)です。 認知症に関する心配事がありましたら、お気軽にご相談ください。 所在地:日野市多摩平3の1の17 電話番号:042(843)1777 ※2認知症認定看護師 認知症について専門の教育機関で学び、高い専門性に基づき熟練した看護を提供する看護師です。 ※3地域包括支援センター 地域の高齢者の方の暮らしを支える「総合相談窓口」です。 日野市内には9カ所設置されており、それぞれのセンターには高齢者の生活を支える専門職が配置されています。 ※4認知症家族介護者交流会 認知症の高齢者を介護しているご家族などが集まり、介護の悩みを話し合ったり、情報交換を行ったりする交流の場です。 参加を希望される方は、担当の地域包括支援センターにご連絡ください。 ※5認知症徘徊高齢者S0Sネットワーク 認知症により徘徊の可能性がある高齢者の情報を事前に登録していただき、 徘徊発生時には市や地域包括支援センター、日野警察署のほか、地域の協力市民の方や事業所が情報を共有し、 早期の発見・保護に努める取り組みです。 ※6徘徊高齢者等探索サービス 認知症により徘徊の可能性がある方に対し、 GPS端末機器を携帯していただくことで、徘徊発生時にご本人の居場所を探索し、早期発見、事故防止を図るサービスです。 ※7日常生活賠償補償 徘徊高齢者等探索サービス(※6)の付帯サービスとして、 認知症の方が他人にケガをさせてしまったり、物を壊してしまうなどで法律上の損害賠償責任を負った場合に備える保険です。 徘徊高齢者等探索サービスを利用することで自動的に保険に加入することができます。 ※8認知症サポーター養成講座 認知症の症状や認知症の方への対応の方法などをお伝えする講座です。 講座を受講された方は、 普段の生活の中で認知症の方のためにできることをする、認知症の方の応援者、「認知症サポーター」となります。