日野市障害者差別解消推進条例 (解説付) (前文) 私たち一人ひとりは、かけがえのない存在であり、全ての市民は、平等に権利を持っています。 多様性が認められ、様々な人が地域にともに生き、活躍できる社会は、全ての市民にとって暮らしやすい豊かな社会です。 障害のあるなしにかかわらず、ともに育ち、ともに学び、ともに働き、ともに暮らし、ともに尊重し、ともに支え合うことのできる社会こそが、私たちの目指すべき「ともに生きるまち 日野」です。 しかし、障害者が区別、排除、制限をされてきた過去があり、障害や障害者に対する理解不足や関心のなさから生じる誤解や偏見、差別が今なお存在しています。 多くの障害者やその家族が、生活環境、教育、就労、婚姻、出産などの日常生活の様々な場面で困難に直面し、また、自立や社会参加が妨げられることもあり、その苦痛から胸が締め付けられるような思いを感じています。 障害者が日常生活又は社会生活で感じる不自由は、社会に存在する様々な障壁(バリア)に直面した際に起こるものであり、社会に存在するバリアを取り除くことは、私たちの責任です。 私たちは、障害を理由としたあらゆる差別の解消に取り組まなければなりません。 平成18年には国際連合において障害者の権利に関する条約が採択されました。 その後、日本は条約の締結に向けて、障害者基本法及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の改正、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定等、国内法の整備を進め、平成26年に障害者の権利に関する条約を締結しました。 この条約の履行状況について、令和4年に日本政府が初めて障害者権利委員会から審査を受け、その結果として総括所見が出されました。 この総括所見では、日本の障害者政策に対する課題や改善点が指摘されています。 例えば、障害者の自立支援や自己決定権の尊重、分離された教育の中止と障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)の推進、入所施設や精神病院からの地域移行の推進などが挙げられています。 また、世界共通の目標として、平成27年には持続可能な開発目標SDGsが国際連合において採択されました。 このSDGsは、全ての国や人々が協力しあうことで多様性と包摂性のある持続可能な世界を目指すものです。 その中で、人々の尊厳は基本的なものであるとの認識の下に、誰一人取り残さないことを誓っています。 令和元年に「SDGs未来都市」に認定されている日野市は、より一層、誰一人取り残さないインクルーシブ社会を実現する必要があります。 このような背景を踏まえて、日野市は「ともに生きるまち 日野」の実現に向けて、障害のあるなしにかかわらず誰もが互いに人格と個性を尊重し共生するインクルーシブ社会を目指し、この条例を制定します。 <考え方> この条例の制定の趣旨や目的を明らかにするために、前文を設けました。 「ともに生きるまち 日野」は、日野市障害者計画において目指すべき姿として定められているフレーズで、障害の有無にかかわらず、誰もが互いに人格と個性を尊重し合う共生社会を表しています。 <令和6年度改正> 条例施行後3年の経過を契機に、日野市障害者差別解消推進条例の見直しを行いました。 本条例は、制定時に障害当事者や関係団体、事業者、教育・医療関係者、学識経験者などをはじめとする多くの方々と検討を重ねたものです。 このような経緯で制定された条例をより良いものとするためには、制定当時と同様に多くの方のご意見を伺う必要があります。 そのため、アンケート調査を実施し、その結果についてさらに検討を重ね、反映したのが今回の改正内容です。 具体的には、障害や障害者に対する無関心さが差別につながることがあるという現状や、多くの障害者やその家族が自立や社会参加が妨げられている現状があるというご意見からその旨を追記しています。 また、より現状に即した条例とするため、本条例施行後の社会情勢についても大きく2点追記しています。 1点目は令和4年の国連の障害者権利委員会が日本政府に対して行った審査の結果である総括所見、2点目は世界共通の目標であり、日野市も推進している持続可能な開発目標SDGsについてです。 これまで、本条例では障害のあるなしにかかわらず、誰もが互いに人格と個性を尊重し合う共生社会の実現を目指してきました。 これからは、これまでの思いや取組なども大切にしながら、総括所見やSDGsといった国際的な視点も加味して共生社会を発展させたインクルーシブ社会の実現を目指していきます。 第1章 総則                                   (目的)                                                         第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)の趣旨を受け、障害を理由とする差別を解消することに関する基本理念を定め、日野市(以下「市」という。)、市民及び事業者の責務を明らかにし、障害を理由とする差別の解消のための取組に係る基本的な事項を定めるとともに、障害及び障害者に対する理解を深めることにより、全ての市民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、互いに人格と個性を尊重し合う共生社会を実現することを目的とする。 <考え方> 平成18年に国際連合において障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)が採択されました。 その後、日本は条約の締結に向けて、障害者基本法の改正及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の改正、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の制定等、 国内法の整備を進め、平成26年に障害者権利条約を締結しました。 日野市は、障害を理由とする差別を解消するための取組を進め、市民や事業者が障害及び障害者に対する理解を深めることで、障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を推進しなければなりません。 平成28年4月に施行された障害者差別解消法第14条に規定されている「相談及び紛争の防止等のための体制整備」、第15条に規定されている「啓発活動」に関して必要な事項を条例に定めることにより、 障害を理由とする差別を解消し、共生社会「ともに生きるまち 日野」を実現することをこの条例の目的として規定したものです。 <参考> ■障害者差別解消法 (相談及び紛争の防止等のための体制の整備) 第14条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう人材の育成及び確保のための措置その他の必要な体制の整備を図るものとする。 (啓発活動) 第15条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 障害者手帳等の有無にかかわらず、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病その他の心身の機能の障害がある者(障害が重複する者を含む。)であって、障害及び社会的障壁との相互作用により継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2)社会的障壁 障害者にとって、日常生活又は社会生活を営む上で、妨げとなるような事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (3)障害を理由とする差別 次号の不当な差別的取扱いを行うこと及び第5号の合理的配慮を提供しないことをいう。 (4)不当な差別的取扱い 障害又は障害に関連することを理由として行われるあらゆる区別、排除又は制限であって、障害者のあらゆる活動分野において、他の者と等しく、全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、 又は妨げる目的や効果の有るものをいう。 (5)合理的配慮 障害者が、他の者と等しく、全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するために必要となる適切な調整や変更を過重な負担の生じない範囲で行うことをいう。 (6)障害の社会モデル 障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、その心身の機能の障害のみに起因するものではなく、社会的障壁と相対することによって生ずるものであるとする考え方をいう。 (7)市民 市内に居住する者、市内で働く者、市内で学ぶ者及び市を訪れる者をいう。 (8)事業者 市内で商業その他の事業活動を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいい、営利・非営利、個人・法人の別を問わない。 (9)インクルーシブ社会 全ての人が自分らしく生きることができ、個々の違いや多様性を認め合いながら、平等に参加できるものであり、障害のあるなし、年齢、性別、人種、民族、国籍、宗教、経済状況等による差別や偏見がなく、誰もが尊重され、望む場所で安心して楽しみながら生活できる社会をいう。 <考え方> 解釈の疑義が生じないよう、条例の中で用いる用語の定義を規定するものです。 (1)障害者 障害者手帳の有無にかかわらず、障害者の定義をするものです。障害者差別解消法第2条第1項の規定をもとに、法の条文に明示されていない「高次脳機能障害」「難病」についても明示することで、この条例の対象となる障害者をイメージできるようにしています。ここでいう「難病」とは、難病の患者に対する医療等に関する法律に基づく指定難病に限定するものではありません。 また、障害者の中には、独特の困難さを抱える重複障害者が含まれます。 (2)社会的障壁 社会の様々な仕組みや社会的構造物が、障害のない人を中心として発展した結果、障害者が日常生活や社会生活を営む上で妨げとなっていることを意味します。 建築物などのハード面だけでなく、障害のない人を前提として作られた制度やルール、常識・慣行等あらゆるものを含みます。障害者差別解消法第2条第2号の規定と同じ趣旨となります。 (3)障害を理由とする差別 下記の「(4)不当な差別的取扱い」及び「(5)合理的配慮」の不提供を、障害を理由とする差別と定義するものです。 (4)不当な差別的取扱い 「間接差別」「関連差別」を含むあらゆる区別、排除又は制限であって、障害者を障害者でない者と比べて不利に取り扱うことを、不当な差別的取扱いと定義するものです。 「間接差別」・・・外形的には中立の基準、規則、慣行ではあっても、それが適用されることにより結果的には他者に比較し不利益が生じる場合。 (事例:説明会に手話通訳者がいないため、内容が分からなかった。) 「関連差別」・・・障害に関連することを理由として行われる区別、排除又は制限。 (事例:介助犬を連れていることを理由に入店を拒否された。) (5)合理的配慮 合理的配慮は、下記(6)障害の社会モデルの考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものです。 過重な負担については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。 過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めること、代替手段の話し合いを行うことが求められます。 ● 事務・事業への影響の程度 ● 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ● 費用・負担の程度 ● 事務・事業規模 ● 財政・財務状況 (6)障害の社会モデル 障害は個人の機能的な問題であるという「医学モデル」の考え方から、個人の心身の機能障害のみに起因するものではなく、社会的障壁と相対することによって生ずるものであると、障害の捉え方が変わっています。 社会的障壁を取り除くことは、社会の責任であり、社会的障壁を除去することは、障害者だけでなく、全ての市民が暮らしやすいまちづくりにつながります。 (7)市民 市内在住・在勤・在学者に日野市を訪れる者を含めて市民と定義するものです。日野市内での障害者への差別は、市民だけでなく市外から来られる方にも起こる可能性があります。 日野市に観光や買い物等で市外から訪れる来訪者も市民の定義に含めるものです。 <令和6年度改正> 市民の定義について、意義に変更はありませんが、より意義が伝わりやすいよう、表記を一部変更しました。 (8)事業者 日野市内において商業その他の事業を行う者を指します。 <令和6年度改正> (9)インクルーシブ社会 インクルーシブ社会の定義については本条例の第14条にて規定されている障害者差別解消支援地域協議会にて検討を重ね、定義づけを行いました。 インクルーシブ社会とはこれまで本条例で目指していた共生社会にSDGsの「誰一人取り残さない」という目標をはじめとする国際的な視点を加味して発展させたものです。 一人ひとりが尊重され、社会とのかかわり方について自ら選択することができ、さらに、楽しみながら生活ができる社会のことをインクルーシブ社会と定義しています。 <参考> ■障害者差別解消法 (定義) 第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、 障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (第3号から第6号まで略) 七 事業者 商業その他の事業を行う者(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (基本理念) 第3条 障害を理由とする差別の解消は、次に掲げる事項を基本理念として図られなければならない。 (1)障害のある人もない人も等しく全ての人権及び基本的自由を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 (2)社会的障壁の除去や合理的配慮の提供は、障害の社会モデルを踏まえて、障害の有無にかかわらず全ての市民にとって有益であることを認識し、互いに協力する必要があること。 (3)障害者が社会を構成する一員として、生涯にわたって、社会、政治、経済、教育、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 (4)障害者は、どこで誰と生活するかについての選択の機会が保障されること。 (5)障害者は、言語(手話等を含む。)、点字、音声情報、イラストその他の意思疎通のための手段が最大限に確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会が拡大される必要があること。 (6)障害者が性別、年齢、障害の種類や個々の状況等の複合的な原因により困難な状況に置かれている場合は、その状況に応じた適切な配慮がなされること。特に次に掲げる区分に応じ、それぞれ次に定める事項に留意すること。 ア 障害のある女性 障害及び性別による複合的な原因により困難な状態に置かれている場合があること。 イ 障害のある児童及び高齢者 それぞれの個別のニーズや置かれた状況に応じた支援の必要があること。 <考え方> この条例全体に共通する考え方・視点を定めるものです。 (1)基本的人権と生活の保障 障害者基本法第3条を参考に、障害の有無にかかわらず、全ての人が基本的人権を享有することを規定するものです。 (2)障害の社会モデルの考え方と相互協力 障害者が暮らしやすいまちは、全ての市民が暮らしやすいまちにつながります。 障害の社会モデルの考え方を踏まえ、相互協力の必要性を表しています。 (3)社会参加の機会の確保 障害者基本法第3条第1項を参考に、生涯にわたって社会参加の機会が確保されることを規定するものです。 (4)暮らす場所や生活の形態を選択する権利の保障 障害者基本法第3条第2項を参考に、障害者は、入所施設やグループホームなど、 特定の生活施設で生活する義務を負わないことを表しています。また、障害の有無にかかわらず、結婚して配偶者と生活すること、出産して子どもと生活すること、一人暮らしをすること等、どこで誰と生活するかを選択する権利があります。 (5)意思疎通の手段と情報の取得・利用の保障 障害者基本法第3条3項を参考に、情報保障の推進について規定するものです。 「意思疎通のための手段」の例として、視覚障害者に対する点字、拡大文字、音声情報、聴覚障害者に対する手話、筆談、知的障害者や発達障害者に対するひらがな書き、 イラスト、実物の提示、身振り等のサインによる合図等が考えられます。 <令和6年度改正> 令和4年5月には障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が施行されました。 同法は障害者による情報の取得利用・意思疎通に係る施策を総合的に推進し、共生社会の実現に資することを目的に制定されたものです。 障害者があらゆる分野の活動に参加するためには、情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が極めて重要です。「ともに生きるまち 日野」の実現に向け、情報保障の推進に向けた取組を進めていく必要があります。 (6)複合的な要因への配慮 障害者が困難な状況に置かれている場合、障害があることだけでなく、性別や年齢、国籍等の様々な要因が考えられます。また独特な困難さを抱える重複障害者等、その状況に合わせて適切な配慮がされる必要があることを規定するものです。 特に、女性の障害者は、障害に加えて女性であることにより、障害者差別と性差別という複合的に困難な状況に置かれている場合があります。また障害児には、成人の障害者とは異なる、個々の発達や特性に応じた支援等の必要性があります。 <令和6年度改正> 今回の見直しにおいて、複合的な要因への配慮について特に強調されていた女性や児童のみならず、他にも留意すべきものがあるという観点から、一部文言を修正しました。 特に留意すべき女性や児童、高齢者については例示として記載するという形にしています。 これらの例示は、他にも配慮が必要な場合があることを示すためであり、今回の改正は決して女性や児童、高齢者が直面する固有の困難さを軽視するものではありません。 特に、女性については、令和6年4月に施行された、困難な問題を抱える女性への支援のための施策を推進することで、人権が尊重され、女性が安心して自立できる社会の実現を目指す、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援新法)の趣旨も踏まえ、適切な配慮がされる必要があります。 <参考> ■障害者基本法 (地域社会における共生等) 第3条 第一条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。 一 全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する 機会が確保されること。 二 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会に おいて他の人々と共生することを妨げられないこと。 三 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 ■障害者権利条約 第29条 政治的及び公的活動への参加 締約国は、障害者に対して政治的権利を保障し、及び他の者との平等を基礎としてこの権利を享受する機会を保障するものとし、次のことを約束する。 (a)特に次のことを行うことにより、障害者が、直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、他の者との平等を基礎として、政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができること(障害者が投票し、及び占拠される権利及び機会を含む。)を確保すること。 (以下、略) (b)障害者が、差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、政治に効果的かつ完全に参加することができる環境を積極的に促進し、及び政治への障害者の参加を奨励すること。 (以下、略) (市の責務) 第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関する必要な施策を計画的かつ継続的に実施し、必要な体制整備を図るとともに、地域における障害、障害者及び障害の社会モデルに関する理解の促進を図るための啓発を行わなければならない。 2 市は、市民及び事業者がこの条例に基づいて行う取組に対して、必要な支援を行うものとする。 3 市は、第7条及び第8条の趣旨を踏まえ、その事務又は事業を行うに当たり、職員に対し、障害及び障害者に対する理解を深める取組を行わなければならない。 <考え方> 市の基本的な責務として、障害者差別解消のための施策を実施すること、相談及び紛争解決のための体制整備を図ること、市民及び事業者に対する理解啓発を行うことを規定するものです。 相談及び紛争解決のための体制整備についての具体的な規定は、第9条(相談、助言等)以降の条になります。 障害を理由とする差別が起こる要因の一つとして、障害に関する理解不足や偏見が考えられます。そのため、障害、障害者及び障害の社会モデルについての理解促進を図る啓発活動を行うことが重要です。 障害者差別解消のため市の全ての部署が障害者やその家族の相談に向き合い、バリアフリー化や環境整備などの施策を積極的に検討します。 また差別解消のための取組は、市だけでなく、市民や事業者も自ら積極的に推進するべきですが、市はその取組に対して必要な支援を行うことを規定しています。 <令和6年度改正> 市が責務を全うし、また市職員による差別的な対応をなくすためにはまずは市職員が障害及び障害者に対する理解を深める必要があります。 市ではこれまでも職員研修をはじめとした取組を実施してきましたが、今後もより推進していくためにも、改めて義務付ける規定を設けたものです。 <参考> 障害者差別解消法 (国及び地方公共団体の責務) 第3条 国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。 (相談及び紛争の防止等のための体制の整備) 第14条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう人員の育成及び確保のための措置その他の必要な体制の整備を図るものとする。 (啓発活動) 第15条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。 (市民の責務) 第5条 市民は、基本理念にのっとり、障害、障害者及び障害の社会モデルについて主体的に理解を深め、市や事業者とともに、障害を理由とする差別の解消の推進に努めなければならない。 <考え方> 障害を理由とする差別が起こる要因の一つと考えられている偏見や理解不足を解消するため、障害、障害者及び障害の社会モデルについて、市民が自ら積極的に理解を深めることが重要であることを踏まえ、市民の責務を規定するものです。 <参考> 障害者差別解消法 (国民の責務) 第4条 国民は、第1条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。 (事業者の責務) 第6条 事業者は、基本理念にのっとり、障害、障害者及び障害の社会モデルについて主体的に理解を深め、障害を理由とする差別の解消の推進に取り組むとともに、市が障害を理由とする差別の解消の推進のために実施する施策に協力するよう努めなければならない。 2 事業者は、障害者等から合理的配慮の提供を求められた場合には、合理的配慮の提供を行わなければならない。 3 事業者は、次条及び第8条の趣旨を踏まえ、その事業を行うに当たり、従業者に対し、障害及び障害者に対する理解を深める取組を行うよう努めなければならない。 <考え方> 障害を理由とする差別が起こる要因の一つと考えられている偏見や理解不足を解消するため、障害、障害者及び障害の社会モデルについて、事業者も自ら積極的に理解を深めることが重要であることを踏まえ、事業者の責務を規定するものです。 障害の社会モデルの考え方に基づき、社会的障壁を取り除くことは社会の責任ですが、現在も進んでいない状況があります。 社会的障壁を取り除くために合理的配慮の提供を行うことを、事業者の義務と規定することで、障害の社会モデルの考え方を浸透させ、日野市における障害者差別解消の推進を目指します。 また、障害者差別解消法では事業者の努力義務となっている合理的配慮の提供について、平成30年10月施行の「東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例(都条例)」において、義務と規定しており、都条例との整合性が図られています。 合理的配慮の提供についての詳細は、第8条(合理的配慮の提供)の条文に規定しますが、事業者がこの条例を読んだ際に、事業者自身の義務であることが明確にわかるよう、第6条 (事業者の責務)にも同様の内容を規定するものです。 <令和6年度改正> 令和6年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者の合理的配慮の提供が義務化されました。 都条例及び本条例においては制定当初から義務化されていましたが、法改正の動きも考慮し、合理的配慮の提供のために必要不可欠な従業者に対する障害及び障害者に対する理解を深める取組について、改めて努力義務として規定したものです。 <参考> ■障害者差別解消法 (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 ■東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例 (障害を理由とする差別の禁止) 第7条 都及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 都及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(知的障害、発達障害を含む精神障害等により本人による意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明を含む。)があった場合において、当該障害者と建設的な対話を行い、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢、障害の状態等に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 第2章 障害を理由とする差別の解消 (不当な差別的取扱いの禁止) 第7条 市、事業者及び全ての市民は、障害者及びその家族に対して不当な差別的取扱いをしてはならない。 また、市及び事業者は、次に掲げる不当な差別的取扱いをしてはならない。 (1) 教育・療育に関する差別的取扱い ア 障害者若しくはその家族の意思を尊重せず、又は必要な情報提供や説明を行わずに、就学する学校若しくは特別支援学校を決定すること。 イ 正当な理由なく、障害を理由として、教育の機会を提供することを拒否し、又は提供する教育内容を一部制限すること。 (2)保育に関する差別的取扱い 正当な理由なく、障害を理由として、保育を拒否し、又は制限すること。 (3) 福祉サービスの提供に関する差別的取扱い 障害者の意思に反して、福祉サービスの利用に関する適切な相談及び支援を行うことなく、施設入所や通所、訪問等福祉サービスの利用を強制し、又は拒否し、若しくは制限すること。 (4)医療及び保健サービスの提供に関する差別的取扱い ア 正当な理由なく、障害を理由として、医療又は保健サービスの提供を拒否し、又は制限すること。 イ 障害者の意思に反して、長期間の入院を含む医療を受けることを強制し、又は隔離すること。 (5) 雇用及び就労・労働に関する差別的取扱い ア 労働者の募集又は採用に関し、障害者の募集又は採用を行わないこと。 イ 障害者の雇用に関し、賃金、労働時間、配置、昇進、教育訓練、福利厚生その他の労働条件について、障害者でない者と異なる不利益な取扱いをすること。 (6)不特定多数の者が利用する施設(公共的施設)の提供に関する差別的取扱い 障害者の公共的施設の利用に関し、正当な理由なく、障害を理由として、その利用を拒否し、又は制限すること。 (7)公共サービスに関する差別的取扱い 公共交通機関の利用に関し、正当な理由なく、障害を理由として、その利用を拒否し、又は制限すること。 (8)情報の提供又は受領に関する差別的取扱い ア 障害者に対する情報の提供を拒否すること又は障害者本人ではなく、その家族や支援者のみに対して情報提供をすること。 イ 障害者が選択した手段による意思表示を受けることを拒否し、又は障害者から受ける意思表示の手段を制限すること。 (9)商品の販売又はサービスの提供に関する差別的取扱い 正当な理由なく、障害を理由として、商品の販売若しくはサービスの提供を拒否し、又は制限すること。 (10)不動産取引に関する差別的取扱い 不動産の売買、賃貸借その他の不動産取引に関 し、障害者又は障害者と同居する者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、不動産取引を拒否し、又は制限すること。 (11)災害・防災に関する差別的取扱い ア 災害時の避難又は避難生活に関し、障害者でない者と異なる不利益な取扱いをすること。 イ 災害訓練又は防災活動に関し、障害者の参加を拒否すること。 (12)文化、芸術及びスポーツに関する差別的取扱い 文化、芸術及びスポーツに関する活動に関し、正当な理由なく、障害を理由として、その参加を拒否すること。 (13)前各号に掲げるもののほか、障害者の日常生活及び社会生活全般に関わる全ての場面において、不当な差別的取扱いをすること。 <考え方> 全ての人に対して、障害者及びその家族に対して不当な差別的取扱いをすることを禁止する規定です。 障害当事者だけでなく、その家族も不当な差別的取扱いを受けることがあるため、家族に対する不当な差別的取扱いも禁止していることがこの条例の特徴です。 不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、問題となる事務・事業の諸事情が同じ状況において、障害者を障害者でない者より不利に取り扱うことを指しています。 正当な理由に相当するのは、それが客観的に正当な目的のもとに行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。 市及び事業者は、正当な理由に相当するかどうか、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益の保護等の観点から、具体的 場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。 (1)〜(12)には、差別とは何か、条例を読んだ人が具体的に理解できるよう、場面ごとの不当な差別的取扱いを例示しています。 この例示は、平成29年に日野市で行った「障害を理由とする差別解消推進に向けてのアンケート」の事例をもとにまとめたものです。 (1)教育・療育に関する不当な差別的取扱いの例示です。 教育には小中学校、高校等のほか、幼稚園を含みます。療育とは、障害のある子ども一人ひとりに合わせて、生活するために必要な医療や教育、トレーニングを行うことで、日野市には療育支援を行う施設として「日野市発達・教育支援センター」があります。 障害のある子どもの年齢や特性に応じ、その特性を踏まえた教育・療育が受けられるようにするための支援を行う必要があります。 (2)保育に関する不当な差別的取扱いの例示です。障害のある子どもの年齢や特性に応じ、その特性を踏まえた保育が受けられるようにするための支援を行う必要があります。 (3)福祉サービスの提供に関する不当な差別的取扱いの例示です。福祉サービスには、 障害福祉サービス、介護保険サービス等全ての福祉サービスを含みます。 (4)医療及び保健サービスの提供に関する不当な差別的取扱いの例示です。病院、診療所、助産所、薬局、訪問看護ステーション等の医療、健康診査や予防接種、健康教室などの保健サービスを指しています。 (5)雇用及び就労・労働に関する不当な差別的取扱いの例示です。 障害者差別解消法では、行政機関や事業者が事業主として労働者に対して行う差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)によると規定していますが、雇用における差別とは何かを具体的に理解できるよう、この条例では例示として規定するものです。 (6)不特定多数の者が利用する施設(公共的施設)の提供に関する不当な差別的取扱いの例示です。 公共的施設とは、官公庁が設置する市役所・公園・道路・図書館・学校 (災害時の指定避難所を含む)等のほか、鉄道・バス・タクシーなどの車両等、駅やバス停等の交通施設、病院・店舗・劇場・集会場等の不特定多数の人の利用に供する施設をいいます。 建物その他の施設の構造上やむを得ないと認められる場合や、障害者の生命及び身体の保護のためやむを得ないと認められる場合等、合理的な理由がある場合は除かれます。 (7)公共交通サービスに関する不当な差別的取扱いの例示です。鉄道やバス、タクシー等の公共交通機関の利用について示しています。 公共交通機関の車両等の構造上やむを得ないと認められる場合や、障害者の生命及び身体の保護のためやむを得ないと認められる場合等、合理的な理由がある場合は除かれます。 (8)情報の提供又は受領に関する不当な差別的取扱いの例示です。障害者が必要な情報にアクセスできることは、障害者の生活に必要不可欠です。 障害のない人と同じように情報が保障されるためには、情報を提供する側の障害特性への理解が必要です。障害のある方それぞれの特性に応じた情報提供の配慮を行わなければいけないことを示しています。 (9)商品の販売又はサービスの提供に関する不当な差別的取扱いの例示です。商業施設や店舗、飲食店や遊戯施設等での商品の販売やサービスの提供全般を指しています。 (10)不動産取引に関する不当な差別的取扱いの例示です。建物等の構造上やむを得ないと認められる場合等、合理的な理由がある場合は除かれます。 (11)災害・防災に関する不当な差別的取扱いの例示です。障害を理由に不利益な取扱いをすることは差別的取扱いに当たりますが、災害時には障害者でない者と異なる配慮を必要とする場面があることに注意が必要です。 (12)文化・スポーツ・芸術に関する差別的取扱いの例示です。余暇の活動が保障されることは、障害の有無にかかわらず、充実した生活を送るために必要です。 <参考> ■ 障害者差別解消法 (事業主による措置に関する特例) 第13条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによる。 ■ 障害者雇用促進法 (障害者に対する差別の禁止) 第34条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。 第35条 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。 (合理的配慮の提供) 第8条 市及び事業者は、次に掲げる場合のほか、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明を含む。)があった場合は、必要な合理的配慮の提供を行わなければならない。 (1)教育、療育又は保育を提供する場合 (2)住居、道路、建物、交通機関その他の生活環境に関する施設、設備又はサービスを提供する場合 (3)労働者の募集、採用及び労働条件を決定又は変更する場合並びに就労を継続するための相談支援を行う場合 (4)意思疎通に関して、情報を提供し、又は受領する場合 (5)前各号に掲げる場合のほか、障害者の日常生活及び社会生活全般に関わる場合 2 合理的配慮の提供は、建設的対話を通じて、性別、年齢、障害の状況等に応じて行わなければならない。 <考え方> 市及び事業者に対して、障害者への合理的配慮の提供を義務付ける規定です。 第6条(事業者の責務)にもある通り、障害者差別解消法では事業者の努力義務となっている合理的配慮の提供について、平成30年10月施行の都条例においては、義務と規定しています。 意思の表明には、例えば知的障害や精神障害、発達障害等により本人による意思表明が困難な場合には、その家族や介助者等が本人を補佐・代弁して行うものが含まれます。 合理的配慮の提供は、障害者と合理的配慮の提供を求められた市及び事業者が、対等な立場で建設的対話を通じて、柔軟に対応することが求められます。 合理的配慮の内容については、個々の事例によって個別具体的な内容になることが想定され、技術の進歩や社会情勢の変化に応じて変わり得るものです。 この条例では、(1)〜(5)として特に配慮が必要な分野を列挙しています。分野ごとの具体的な合理的配慮の事例は下記のとおりですが、これはあくまで過去の事例であり、個別の場面によって変わり得るものです。 (1)教育・療育・保育 個々の発達や特性に合わせた教材を用意した。 授業の際、支援員の同行を認めた。 入学試験において、本来の目的を損ねない範囲で別室受験、時間延長、読み上げ機能等の使用を許可した。 ※保護者や家族が障害者の場合であっても、ほかの障害者への合理的配慮と同様の対応が必要です。 (2)生活環境 車いすや杖を使用していて手動の扉を開けられない方に対して、扉の開閉を手伝った。 目的地までの経路がわかりにくい場合に、目的地まで付き添いを行った。 施設や避難所、投票所等の建物に段差がある場合に、移動しやすいようスロープを設置した。 災害時、避難が困難な障害者に対し、早めに避難の呼びかけを行った。 (3)雇用・就労 障害の特性に応じた労働時間や休憩時間の調整を行った。 障害の特性に応じ、仕事内容を一つずつ指示する、メモで示すなど、社内でルールを統一した。 障害の特性に応じ、室内の温度調整や動線の確保など、労働環境に配慮した。 (4)意思疎通 事故や災害時等、聴覚障害者に対し、文字情報等音声以外の方法で情報を伝えた。 視覚障害者に対し、パソコンを使用して読み上げることができるよう、電子データで資料を提供した。 障害の特性に応じ、書類にルビをふる、イラストや写真を使う、わかりやすい言葉に置き換えて説明した。 (5)その他全般 視覚障害と聴覚障害のある重複障害者に対して、手の平に文字を書く(手書き文字)方法でコミュニケーションをとった。 避難所や待合室などで、人混みが苦手な障害者が落ち着いて過ごせるような場所を用意した。 投票所に分かりやすい移動経路の案内掲示をし、車いすの方等が記入しやすい低い記載台を設置した。 <令和6年度改正>  令和6年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者の合理的配慮の提供が義務化されました。なお、都条例及び本条例においては制定当初より義務としていたため、合理的配慮の提供についての改正はありません。 第3章 差別等事案を解決するための仕組み (相談、助言等) 第9条 障害者、その家族若しくは関係者又は事業者若しくは市民は、障害を理由とする差別に該当すると思われる事案(以下「差別等事案」という。)について、市及び市が指定した相談機関に相談することができる。 2 市が指定した相談機関は、差別等事案に関する相談を受けたときは、その内容について速やかに市に報告するものとする。 3 市は、差別等事案の相談があったとき、又は前項の規定による報告を受けたときは、必要に応じて次に掲げる事務を行うものとする。 (1)事実の確認及び把握 (2)必要な情報提供及び助言 (3)差別等事案の関係者間の調整 (4)関係行政機関への紹介及び連携 <考え方> 障害を理由とする差別に関する相談体制について規定するものです。第4条(市の責務) に定める「相談及び紛争解決のための体制整備を図ること」に係る規定です。 「その家族等若しくは関係者」には、後見人や保護者、障害者を支援する相談支援事業者や通所施設等の福祉事業者等が含まれます。 また、一般の事業者や市民の方も差別等事案について相談することができますが、第10条(あっせんの申立て)に定めるあっせんの申立てはできません。 「市が指定した相談機関」とは、市が依頼する市内の相談支援事業所を想定しています。 差別等事案とは、不当な差別的取扱いに関することだけでなく、合理的配慮の提供に関することが含まれます。 事業者等からの相談の内容には、合理的配慮の提供に関する助言や情 報提供が想定されます。まずは障害者差別に関わる相談を広く受け付け、あっせん等の紛争 解決の前に、相互理解に基づく調整を図ります。 「(4)関係行政機関への紹介及び連携」とは、例えば差別等事案が広域にわたる場合や市外で起こった場合、他法の規定によるものなど、この条例の対象外となる内容の場合に、相談を受け、解決に向けて、東京都や他の行政機関との連携や紹介を想定しています。 (あっせんの申立て) 第10条 障害者、その家族又は関係者は、市長に対し、市又は事業者を相手方として、差別等事案を解決するために必要なあっせんの申立てをすることができる。ただし、障害者本人の意に反するあっせんの申立ては、この限りでない。 2 前項のあっせんの申立ては、前条の規定に基づく相談及び助言等を経た後でなければすることができない。ただし、あっせんの申立てをすることについて緊急の必要性があると市長が認めるときは、この限りでない。 3 あっせんの申立ては、その差別等事案が次の各号のいずれかに該当するときはする ことができない。 (1)行政庁の処分又は職員の職務の執行に関する場合であって、行政不服審査法(平成 26年法律第68号)その他の法令等により審査請求その他の不服申立て又は苦情申立て等をすることができるとき。 (2)障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)に規定する障害者に対する差別の禁止に該当するとき。 (3)当該差別等事案のあった日から3年を経過しているとき(その期間に申立てをすることができなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)、又は同一の事案について過去に第1項の規定に基づくあっせんの申立てを行ったことがあるとき。 (4)現に犯罪の捜査の対象となっているとき。 (5)当該差別等事案について、東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例(平成30年東京都条例第86号)第9条の規定に基づく東京都知事に対するあっせんの求めがなされている場合等、第1項の規定に基づくあっせんの申立てを行うことが適当でないと認めるとき。 <考え方> 差別等事案について、第9条(相談、助言等)に基づき助言等を行った結果、当事者間で合意が得られなかった場合に、あっせんの申立てができることを規定するものです。 この場合の「あっせん」とは、障害者と差別をした者との間に入り、当該差別等事案に関して、公正中立な立場から調整案を提示することをいいます。 申立てができる差別等事案は、日野市の区域内で発生した障害を理由とする差別に関する事案です。申立てができる障害者は、市内在住・在勤・在学者に限らず、買い物や観光 で日野市を訪れる人等を含みます。 「その家族又は関係者」とは、後見人や保護者、障害者 を支援する相談支援事業者や通所施設等の福祉事業者等を指します。 また、あっせんの申立てをできない場合として、下記の場合を定めるものです。 (1)行政不服審査法や市職員の服務規程により対応することが適当な場合 行政庁の処分については、行政不服審査法等に基づく不服申立ての制度によって対応するべきであることから、あっせんの申立てはできません。また、市職員に対しては、日野市職員服務規程の中で対応を行います。 (2)障害者雇用促進法に規定される、事業主として労働者に対して行う差別解消に係る措置 障害者差別解消法では、行政機関や事業者が事業主として労働者に対して行う差別を解消するための措置については、障害者雇用促進法によると規定しています。 障害者雇用促進法では、紛争解決に係る規定があるため、この条例に基づくあっせんの申立てはできません。 (3)過去の事案、繰り返しの事案 当該差別等事案の発生した日(継続する事案の場合は終了日)から3年を経過した場合は、事実関係を確認することが困難なため、申立てはできません。 また、調整案の作成は学識、障害者の権利擁護に関する見識を有する方、障害当事者などから成る協議会で行われ、あっせんは公正中立な立場で行われるものですので、同一の事案に対して繰り返しあっせんの申立てを行うような場合は、申立てはできません。 (4)犯罪捜査の対象の場合 現に犯罪の捜査の対象となっているものは、捜査へ影響が及ぶ可能性があるため、申立てはできません。 (5)東京都等、ほかの条例等により紛争解決の手続きが現に進行中の場合 他の条例等であっせん等の仕組みがあり、既にあっせんの手続きが進行しているときは、この条例に基づくあっせんの申立てはできません。 <参考> ■ 民法 (不法行為による損害賠償請求権の期間の制限) 第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、 同様とする。 (あっせんの手順) 第11条 市長は、前条第1項に規定するあっせんの申立てがあったときは、当該申立てに係る事案について調査を行うことができる。この場合において、調査の対象となる者は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。 2 市長は、前条第1項に規定するあっせんの申立てがあったときは、障害者差別解消支援地域協議会に対し、前項の調査の結果を報告し、あっせんについて諮問するものとする。 3 障害者差別解消支援地域協議会は、前項の諮問に基づく審議に必要があると認める ときは、当該差別等事案に係る障害者、市、事業者その他の関係者に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。 4 障害者差別解消支援地域協議会が市長に対し、あっせんについて答申したときは、市長は、当該答申の内容に基づき、当該差別等事案に係る障害者、市、事業者その他の関係者に対し、あっせんを行うものとする。 <考え方> 第10条(あっせんの申立て)に定めるあっせんの申立てがあった際のあっせんの手順 について規定するものです。 あっせんの申立てがあった際、市は調査を行い、地域協議会に対してあっせんを行うことの適否について諮問します。 この場合、事案の解決を迅速に行うため、地域協議会の要請により「(仮称)あっせん委員会」を開催し、当該事案について協議し、答申案を作成、その結果を地域協議会に報告します。 地域協議会はその答申案に基づき、あっせんの可否を審議し、市長に答申します。 (勧告) 第12条 市長は、前条第4項の規定によりあっせんを行った場合において、当該あっせんを受けた者が正当な理由なく当該あっせんに従わないときは、当該あっせんに従うよう勧告することができる。 <考え方> 第11条(あっせんの手順)に定めるあっせんを行った場合において、正当な理由なく当該あっせんに従わない時に行う勧告の仕組みを規定するものです。 この条例は、相互理解や対話により障害者差別の解消を促進することを目指していますが、差別をしたと認められる者が、正当な理由なくあっせん案に従わない悪質な場合、市長は勧告を行うことができます。 「正当な理由なく」とは、例えば災害や長期不在、急病など、差別をしたと認められる者があっせんに従うことができないやむを得ない事情がある場合を指します。 (公表) 第13条 市長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その勧告の内容を公表することができる。 2 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ当該勧告を受けた者に対し、その旨を通知するとともに、意見を述べる機会を与えなければならない。 <考え方> 第12条(勧告)に定める勧告を行った場合において、正当な理由なく当該勧告に従わない時に行う公表の仕組みを規定するものです。 「正当な理由なく」とは、第12条(勧告)の考え方と同様です。 公表する内容は、勧告の内容であり、勧告を受けた事業者等の氏名(法人名)が含まれることになります。 第4章 障害者差別解消支援地域協議会 (設置) 第14条 障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、障害者差別解消法第17条第1項の規定に基づき、障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を、市長の附属機関として置く。 2 協議会は、次に掲げる事項を処理する。 (1)市長から諮問のあった差別等事案のあっせんに関すること。 (2)障害者差別解消法第18条に規定する協議会の事務等に関すること。 3 協議会は、委員20人以内をもって組織する。 4 委員は、障害者差別解消法第17条第1項に規定する関係機関、障害者差別解消法第17条第2項各号に掲げる者及び障害者の権利擁護に関する優れた識見を有する者のうちから市長が任命する。 5 委員の任期は、3年とし、再任を妨げない。ただし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。 6 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。 <考え方> 障害者差別解消法第17条に定める地域協議会を、市長の附属機関として設置する規定です。地域協議会の委員は、障害者差別解消法第19条に規定される秘密保持義務を負います。 地域協議会は、障害を理由とする差別に関する事例の共有や情報交換、差別を解消するための取組についての協議のほか、この条例の施行状況の検討を行います。 <参考> ■ 障害者差別解消法 (障害者差別解消支援地域協議会) 第17条 国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第2項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。 2 前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。 一 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他の団体 二 学識経験者 三 その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者 (協議会の事務等) 第18条 協議会は、前条第1項の目的を達成するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。 2 (略) 3 協議会は、第1項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者及び差別に係る事案に関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。 4以降 (略) (秘密保持義務) 第19条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。 ■ 地方自治法 (委員会・委員の設置) 第138条の4 (略) 2 (略) 3 普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。 ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。 第5章 雑則 (委任) 第15条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 <考え方> この条例の施行に関し必要な事項、特に、第9条(相談、助言等)から第14条(地域 協議会)までの相談及び紛争の解決のための体制に関する事務手続き等の詳細については規則で定めることを規定するものです。 付 則 (施行期日) 1 この条例は、令和2年4月1日から施行する。 (検討) 2 この条例については、条例施行後3年を目途として、障害者差別解消法の改正状況、この条例の規定の施行の状況、社会情勢の変化等を勘案し、協議会の意見を踏まえ必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 付 則(令和6年条例第37号) この条例は、令和7年4月1日から施行する。 <参考>あっせんの申立てから公表までの流れ【イメージ】 以下は図を文章にしています 障害者やその家族、関係者は第10条あっせんの申立てに基づき、市長にあっせんの申立てを行う 市長は第11条あっせんの手順に基づき、障害者差別解消支援地域協議会に諮問する なお、障害者差別解消支援地域協議会とは第14条設置に基づき設置されている市長の付属機関 障害者差別解消支援地域協議会において、本会を適宜開催し、事例共有・情報交換、差別解消を推進するための取組について協議を行う 協議会があっせん委員会を設置した場合、事実確認等の調査を基にあっせん委員会で調査、検討を行い、答申(案)を行う 答申(案)に基づき協議会の本会であっせんの適否を協議 協議会は市長に対し答申し、市長はその内容に基づき、差別をしたと認められる者(事業者等)に対しあっせんを行う あっせんを受けたものが正当な理由なく当該あっせんに従わないときは、第12条勧告に基づき勧告を行うことができ、それでも従わない場合は第13条公表に基づき勧告の内容を公表することができる