NHK大河ドラマ『新選組！』で土方歳三を熱演
俳優・山本耕史さんインタビュー

土方の魂はここにある
日野に生まれ幕末に活躍した新選組（しんせんぐみ）の副長・土方歳三（ひじかたとしぞう）。
没後150年に当たる今、NHK大河ドラマなどで土方歳三を演じた俳優・山本耕史さんに土方の魅力や、日野の印象などを聞きました。


山本耕史
●やまもとこうじ
1976年10月31日生まれ（42歳）。0歳からモデルとして活動をスタート。
NHK大河ドラマ『新選組！』『真田丸』、舞台『レ・ミゼラブル』『メンフィス』など、テレビや舞台で活躍中。
2019年1月18日には映画『刀剣乱舞』が公開予定。

《写真あり》
撮影地：日野宿本陣
Photo：山西崇文
Text：前田陽子
Stylist：岡野友美
antiqua/CHEST by STYLIA（03・6821・3205）
HARLEM ROUNGE（03・5414・8031）


◆大河ドラマでは、土方歳三という人間を生きさせてもらいました

大河ドラマのオファーをいただいたとき、
近藤勇（こんどういさみ）、土方歳三、沖田総司（おきたそうじ）の名前ぐらいは知っていましたが、
新選組について詳しいことは知りませんでした。
三谷さん（『新選組!』脚本家の三谷幸喜（みたにこうき）さん）が「山本くんが土方歳三にぴったりなんだよ」とおっしゃって、
「そう言ってくださるのなら」と思い、撮影に参加しました。
2004年に放送されたので、もう15年も前の作品なんですが、今でも土方歳三といえば山本だろうと声を掛けていただける。
本当にすごい作品で、土方さんを演じることができてとてもうれしく思っていますし、役者人生のなかで大きな出来事になりました。
同じ役柄を演じるのは、普通のドラマなら3カ月、舞台でも長くて半年程度です。
大河ドラマは撮影期間が1年2～3カ月で、それだけでも長いのに、
2006年に『新選組‼土方歳三最期の一日』、さらに2015年には連続テレビ小説『あさが来た』にも土方歳三役で出演。
まさかこんなに長く演じることになるとは。
土方さんは規律に厳しく、新選組の「鬼の副長」と呼ばれていたそうですが、
『新選組!』の撮影中は僕自身も、良くも悪くも、「鬼の副長」さながらにいきり立っていたんじゃないかな。
役を演じたというよりも、史実に基づいて山本耕史が、現代の形で土方歳三という名前で、似た人間を生きさせてもらった感じ、
といったらいいのかな。
ちゃんとその役を生きた、と思えた役でしたね。

◆印象に残る、日野時代の近藤勇とのシーン

みなさんは、ドラマのなかの「待たせたな」というセリフが印象的だとおっしゃいますが
（『あさが来た』でもこのセリフで登場しファンを喜ばせた）、
僕は作中で、日野時代の勝っちゃん（島崎勝太。のちの近藤勇）との場面が印象に残っています。
勝っちゃんが「何か大きなことをやろうぜ」と夢を語るのですが、それに対する僕（土方）の答えは「考えておく」。
「そうだな、一緒にやろう」なんて夢や希望は言わない。
この後、一緒に京都へ行き新選組となり、幕府のために戦い、
近藤さんが新政府軍に捕らえられ一生会えなくなるまで、ふたりは運命を共にするわけですが、
すべてはここから始まっていたという、印象深いシーンです。

◆「土方さんが生まれた場所なんだ」と感じながら日野市内を歩きました

土方さんのゆかりの地はあちこちめぐりました。
日野にも何度も来ましたよ。高幡不動尊には豆まきで参加させていただいたり、バイクが好きなのでバイクの安全祈願にも来ました。
日野には土方という名前の方が本当に多いんですね。びっくりしました。
土方さんが生まれ育った場所なので、その空気を感じながら市内を散策しました。
日野で毎年行われている「ひの新選組まつり」に参加したこともあります。
市民の方が僕を見かけると声を掛けてくれて……。
土方さんや新選組を、今も愛しているんだな、と感じました。
規律に厳しかった土方さんですが、一方で、とても人望もあった人だったと感じます。
戊辰戦争（ぼしんせんそう）の戦いのなかで近藤さんが新政府軍に捕らえられ亡くなるわけですが、
以降優しくなったというのは、とても理解できる気がします。
近藤さんと新選組を取り仕切っていた時代が終わったと感じ、
心の中の何かがほどけて、日野にいた頃の土方さんに戻れたんじゃないかな、と。
僕も『新選組！』で近藤さんが亡くなる場面の撮影後は、ほかの仲間も誰もいなくなって僕ひとりが残されて、
「早く撮影が終わらないかな」と思っていました。
土方さんもそう感じたんじゃないかなと思います。
土方さんは函館で亡くなっていますが、魂はここ、日野にあると思います。
最後にふるさとに帰って、野原を走って遊びたかった。できれば近藤さんと一緒に。僕はそう思います。


■山本耕史さんおすすめ
土方歳三がテーマの作品

バラガキ
土方歳三青春譜
中場利一著
発行元／講談社
（品切れ・重版未定）
COMMENT…
演じるうえで参考にしました。「バラガキ」とは幼少の頃の土方さんを表す言葉です。
この本で、役柄を“なるほど”と理解できました。
司馬遼太郎さんの描く土方さんは重厚なイメージでしたが、この本はやんちゃな描かれ方で、親しみやすかったですね。


NHK DVD新選組!!
土方歳三最期の一日
発行・販売元
NHKエンタープライズ
copyright2006NHK
COMMENT…
大河ドラマ『新選組!』の放送後に続編として2006年正月のスペシャルドラマ向けに制作されて、主演しました。
死を覚悟して戦った証として写真を撮り、日野に届けさせたり、
土方さんらしいエピソードから彼の人柄を感じることのできる作品です。