日野市ユニバーサルデザイン推進条例 〜自由に行動し、希望をもって生きられるまちづくりのために〜 「こんな条例にしてほしい」提言書 平成19年12月 日野市ユニバーサルデザイン推進条例検討委員会 はじめに ・日野市では、これまで、「誰もが安心してすごせるまちづくり」を目的として、日野市福祉環境整備要綱(昭和63年4月制定)によりバリアフリーのまちづくりを推進してきました。 その後、平成12年に施行された地方分権一括法では、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない(地方自治法第14条第2項)」と定められ、日野市福祉環境整備要綱に義務等の強制力を持たせるには、要綱の見直しが急務の課題となっていました。 また、平成15年4月のハートビル法改正では、地方公共団体独自の条例を策定して必要な制限を付加することができるようになり、この活用も課題となってきました。 ・一方、日野市では、平成15年度に実施した日野市まちづくり条例の市民プロポーザルで、バリアフリーのまちづくりに関する要望が多く上げられるなど、バリアフリーのまちづくりに関する市民の期待が高まっていました。 ・市も、平成16年度以降、市民参画による「交通バリアフリー基本構想」の策定や「公園探検隊」「道路点検隊」といった市民との協働によるバリアフリー化整備など、市民とともにバリアフリー環境整備を進めてきました。こうした取組みの過程で、利用者が本当に使いやすい施設づくりを行うには、こうした市民参画・利用者意見の取入れを制度化し、定常的に行うことが必要ではないかという声があがってきました。 ・このような中、国は、平成18年6月21日に、ハートビル法(建築部門)と交通バリアフリー法(交通分野)を一体させ、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」を公布しました。これにより、社会的にも、建築物と交通の一体的なバリアフリー化が、より一層推し進められることとなりました。 ・これらの動向を受け、日野市では、誰もが安心して暮らせる地域社会の形成を実現するため、バリアフリーのみならず、ユニバーサルデザインのまちづくりを推進するための制度として、条例の導入を検討することにしました。そして、検討機関として、学識経験者、市民、高齢者・女性・商業・観光関係の団体などの関係市民団体、住宅・建築関連団体、障害者団体の代表などからなる「日野市ユニバーサルデザイン推進条例検討委員会」を設置し、平成19年3月、検討をスタートしました。 ・当提言書は、この「日野市ユニバーサルデザイン推進条例検討委員会」が9回にわたる委員会で検討した議論をもとにとりまとめたものです。この提言の趣旨が、できるだけ多く条例本文に反映されることを願ってやみません。 平成19年12月 日野市ユニバーサルデザイン推進条例検討委員会 注)■ハートビル法 正式名称:高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律 (平成6年法律第44号) ■交通バリアフリー法: 正式名称:高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律 (平成12年法律第68号) 目 次 第1章 ユニバーサルデザインに係る条例をつくることになった道のり 1.これまでの市民参画の取組みから見えてきた課題と制度づくりの必要性 2.既存の『日野市福祉環境整備要綱』の運用の課題と新たな制度づくりの必要性 3.ユニバーサルデザインを推進するための条例をつくろう 第2章 こんな「条例」をつくろう 1.制度の選択 2.ユニバーサルデザインのまちづくりの目標像と条例の役割 3.建築物等施設の整備誘導手段に係る制度の種類と選択 −委任条例と自主条例  第3章 条例の内容 T.条例の全体構成 U.前文 V.総則 1.目的 2.用語の定義 3.各主体の責務 W.誰もが使いやすいまちづくり 1.一般都市施設の整備 (1)一般都市施設の整備基準への適合努力義務 (2)整備適合証の交付 2.特定施設の整備 −新設又は改修− (1)特定施設の定義と整備に係る義務の概要 (2)本条例に定める特定施設の範囲と適合を求める基準 (3)特定施設の整備を誘導するための手続き 3.特定施設の整備 −既存特定施設の状況の把握等− 4.市施設の先導的・モデル的整備 5.施設をつなぐ連続した整備の推進 (1)推進地区 (2)安心・安全でわかりやすい移動空間の連続した確保 X.継続的に発展していくしくみ 1.全体の概要と基本方針 2.計画・設計段階 (1)ユニバーサルデザイン推進計画の策定 (2)市の分野別計画へのユニバーサルデザインの視点の取り入れ (3)事業者が行う施設整備への反映 3.実施段階 (1)市施設の先導的・モデル的整備 (2)事業者の主体的・積極的な整備 (3)市民主体の整備 4.評価・点検段階 (1)評価・点検の実施と結果の改善への反映 (2)白書の作成 (3)研修 5.各段階における市民参画 (1)市民意見の収集・反映 (2)市民参画の機会の確保 (3)情報提供・啓発活動 Y.体制づくり 1.審議会 2.庁内横断的組織の整備 Z.その他 1.表彰 2.ユニバーサルデザインのまちづくりの推進の支援 [.見直し期限 第1章 ユニバーサルデザインに係る条例をつくることになった道のり 1.これまでの市民参画の取組みから見えてきた課題と制度づくりの必要性 ・日野市は、平成13年に、日野市の第4次基本構想・基本計画『日野いいプラン2010』を、市民参画で策定しました。それ以降、計画づくり、整備、工事終了後のチェックなど、様々な市民参画の取組みが行われています。 ・このような市民参画で様々な計画づくりやユニバーサルデザイン環境整備の取組みを進める中で、以下の課題と制度づくりの必要性が明らかになってきました。 @ これまでの市民参画の取組みから見えてきた課題 ・基準どおりに整備されたのに使いにくい施設がある。利用者の立場に立った、本当に使いやすい施設をつくりたい。 ・そのためには市民参画が必要だが、市民参画の取組みはスポット的に行われ、制度化されたものではない。 ・計画・設計、事業等の実施方法や整備結果を評価し、改善に反映させる制度はない。 ・点検に参画しても、どこをどう見ていいかよくわからない。参加者も限られている。 ・現行の法律・条例でバリアフリー化の対象外である小規模施設も、対象にしてほしい。 A 課題を踏まえた制度づくりの必要性 ・計画・設計⇒ 整備⇒ 事後評価⇒ 改善のサイクルづくり ・上記各段階への市民参画の制度化、利用者意見を取り入れやすいしくみづくり ・他者への理解の促進・気づきのための、学習・研修・情報提供・交流機会の確保 ・市民のやる気・関心を引きだすしくみづくり ・駅前の小規模建築物のユニバーサルデザイン化を誘導する制度の拡充 ・制度の運用状況の定期的な把握、市民参画から得られた知見・情報の蓄積 2.既存の『日野市福祉環境整備要綱』の運用の課題と新たな制度づくりの必要性 ・日野市は、昭和63年に『日野市福祉環境整備要綱』を制定し、建築物等の施設のバリアフリー化に努めてきました。平成12年に施行された地方分権一括法では、「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」と定められました。そのため、施設の整備義務といった強制力を持たせるには、『日野市福祉環境整備要綱』の見直しが急務の課題となっていました。 ・また、『日野市福祉環境整備要綱』の担当課である生活福祉課に審査担当が1名のみという現状から、審査体制の強化も課題となっていました。 @ これまでの運用から見えてきた課題 ・整備義務を課そうとするなら、要綱の条例化が必要 ・担当課が1名と少ないため、体制の強化が必要 A 課題を踏まえた制度づくりの必要性 ・制度の強度の検討と、それに合わせた制度づくり ・制度に合わせた運用体制づくり 3.ユニバーサルデザインのまちづくりを推進するための条例をつくろう ・以上を踏まえ、平成19年3月に委員会を設置し、制度づくりの検討をはじめました。 ・委員会には学識経験者のほか、障害者団体から5名、関連市民団体から6名、市民4名が参加し、9回にわたる委員会を開催して、検討を重ねました。  ※なお、会議の開催に当たっては、委員会に先立って、委員長・副委員長及び障害者からなる日野交通アクセスを考える会との事務局会議を適宜開催し、検討を深めました。 第2章 こんな「条例」をつくろう 1.制度の選択 ・要綱は法的拘束力を持たない、いわゆる「お願い」であり、「義務」を課すには、議会の議決を経た条例が必要です。そのため、条例をつくり、強制力(法的拘束力)を持たせます。 2.ユニバーサルデザインのまちづくりの目標像と条例の役割 (1)ユニバーサルデザインのまちづくりの目標像 ・日野市の第4次基本構想・基本計画『日野いいプラン2010』も踏まえ、日野市のユニバーサルデザインのまちづくりの目標像を次のとおりとします。 1)市民だれもが自らの意思で自由に行動して、余暇文化活動含めたあらゆる活動に参加し、充実した生活を送ることができる生活環境を実現したまち 2)上記の生活環境の実現によって、市民誰もが人生を楽しみながら希望を持って生きられるまち (2)条例の役割 ・本条例には、目標像を実現するための手段と、推進するためのしくみ を備えます。 (3)本条例の理念と名称 ・本条例は、多様な人々が可能なかぎり最大限に使いやすいように、生活環境をデザインしようと、たゆみなく努力し続けることを、理念(基本姿勢)とします。 ・その上で、この理念に則り、名称を『日野市ユニバーサルデザイン推進条例』とします ※参考:本条例では、ユニバーサルデザインということばを、以下のように定義しています。 「能力、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が可能なかぎり最大限に使いやすいように生活環境をデザインする考え方」 (4)条例の枠組み ・本条例は、先の目標像を実現するための手段と推進するためのしくみを備えます。 ・具体的には、基準に沿った建築物の整備を誘導するための手段と、ユニバーサルデザイン化が継続的に発展していくためのしくみ、実現・発展を支えるための体制と支援制度づくりを位置づけます。 3.建築物等施設の整備誘導手段に係る制度の種類と選択 −委任条例と自主条例 ・基準に沿った建築物の整備を誘導するための制度としては、バリアフリー新法に基づく「委任条例」と、日野市独自の「自主条例」の2種があります。 ・どちらも、「対象とする施設の範囲」や「適合すべき整備基準」を定めることができます。違いは、「委任条例」を定めれば、建築確認という、自主条例よりもさらに強い強制力をもった手法で整備が担保されるという点です。 ・現在、東京都が既に委任条例を定め、国が定めたもの以上の「対象施設の拡大」「整備基準の上乗せ」を行っており、これが日野市にも適用されています。 ・日野市も独自の委任条例を定め、東京都をさらに上回る施設の拡大・基準の上乗せを図ることも考えられます。しかし、これまでの要綱の運用が不十分であったことも踏まえ、まずは、第一ステップとして、自主条例を策定するものとします。 ・今後、自主条例を運用する中で日野市の特性に合った対象施設・基準を見定め、東京都の委任条例に上乗せすべきものが明らかになった時点で、日野市独自の委任条例を策定するものとします。 ※参考 建築確認と委任条例 □建築確認とは? ・建築確認とは、建築基準法第6条に定められているものです。 ・建築物を建築しようとする場合に、その計画が『建築基準関連の規定』に適合していることを確認してもらうものです。確認を受け、確認済証の交付を受けた後でなければ、工事に着手できません。 □委任条例との関係は? ・バリアフリー新法に基づき、『委任条例で定められた施設』については、『委任条例で定められた整備基準』が『建築基準関連の規定』に当たるものとなり、この基準に適合しているかどうかが建築確認の対象になります。 ・このため、委任条例で定めると、強制力をもって整備を担保することができます。 第3章 条例の内容                           T.条例の全体構成 ・大きく、@総則、A建築物等施設の整備を誘導するための自主条例、B継続的発展のしくみ、C体制づくり、D表彰・支援制度等、E附則(見直し期限など)の6つの部分で構成されます。 @ 総則は、前文、条例の目的、用語の定義、各主体の責任と役割で構成されます。 A 建築物等施設の整備を誘導するための自主条例部分は、整備に当たっての基準への適合義務、そのための手続き、手続きがなされなかった場合の措置、現に所有する施設の基準への適合努力義務などで構成されます。 B 継続的発展のしくみは、計画・設計、実施、評価・点検・改善の一連の流れを促すしくみと、市民参画・市民意見の収集、情報提供・啓発などで構成されます。 C 体制づくりは、進捗管理や必要事項の審議を行う審議会の設置、横断的な庁内の連絡組織で構成されます。 D その他として、表彰制度、支援制度があります。 E 最後に条例の見直し期限を定めます。 U.前文 ・前文では、日野市の特徴やこれまでの取組み・背景などをまず述べます。 ・次いで、日野市の「ユニバーサルデザインのまちづくりの目標像」を定め、この目標像実現を目指して条例を制定すると宣言します。 ・以下が、案として考えられます。 ■私たちのまち日野には、緑と湧水が豊かな多摩丘陵と台地と二段の崖線、そして北側には多摩川、中央部には浅川が流れ、縦横に用水が走り、田畑が広がり、今もなお農業が営まれている風景を見ることができます。 ■また、日本を代表する企業の工場、日野の歴史を物語る高幡不動や日野宿等の文化遺産、そして私たちが暮らす水と緑豊かな住環境と商店街が調和し、地域ごとに様々な表情をもたらしています。 ■首都東京の成長とともに人口は増え続けてきましたが、現在は人口増の地域、人口減の地域両側面を持ちながら、全体として人口は微増しており住宅都市として成熟期を迎えようとしています。 ■このような特徴をもつ日野市は、「住みやすく、住みつづけられる良好な環境づくり」、「すべての市民がわけへだてなく、お互いの人権を尊重しつつ、地域の中でお互い助け合い、対等な立場で心のかよう環境づくり」、「政策形成への参画や市民意見が行政運営に反映されるしくみづくり」という3つの目標の実現に向け、市民と行政が一体となって参画、連携、協働によるまちづくりを推進しています。 ■バリアフリー環境整備の取り組みでも「公園探検隊」「道路点検隊」「ユニバーサルデザイン福祉のまちづくり推進モデル事業(ハードとソフトを組み合わせたユニバーサルデザインの整備)」「交通バリアフリー基本構想の策定」など、市民との協働による様々な活動を展開しています。 ■しかしながら、今後高齢化が一層進展していく中で、障害者も含めたあらゆる人が社会に参加できる仕組みを構築していくためには、今後さらに、能力、年齢、性別、人種等にかかわらず、多様な人々が可能な限り最大限に使いやすいような生活環境を形成していく必要があります。 ■日野市では、市民誰もが自らの意思で自由に行動し、余暇文化活動を含めたあらゆる活動に参加し、充実した生活を送ることができる環境づくりを進めます。そのためには、多様な人々の意見を出来るだけ多く取り入れ、相互交流し、継続的、横断的に取り組んでいくことが必要です。 ■このような継続的な取り組みにより、市民誰もが人生を楽しみながら希望を持って生きられる日野をつくりあげることをめざし、この条例を制定します。 V.総則  1.目的の案 ・この条例は、市、市民及び事業者の参画、連携、協働のもとに、ユニバーサルデザインのまちづくりを促進するために必要な事項を定めることにより、市民誰もが自らの意思で自由に行動し、あらゆる活動に参加し、人生を楽しみながら希望を持って生きられる社会を築くことを目的とする。 2.用語の定義 ・条例化にあたり、総則以降の内容に応じて変更されていく部分です。条例策定時に改めて定めます。 3.各主体の責務 ・市や市長の責務、事業者の責務、市民の責務、市、事業者及び市民の協力及び連携について述べます。 ・建築物の整備に係る自主条例の内容や継続的発展のしくみに位置づける内容に応じて、変更されていく部分で、条例策定時に改めて定めます。 W.誰もが使いやすいまちづくり ・ここでは、建築物等施設や、施設間の移動空間の整備を、誘導する手段を定めます。 1.一般都市施設の整備 (1)一般都市施設の整備基準への適合努力義務 ・ここでは不特定かつ多数の者が利用する「一般都市施設」の、整備基準への適合努力義務を定めます。 ・一般都市施設とは、以下の施設です。  医療等施設 公益施設 福祉施設 学校等施設 自動車関連施設 公衆便所 集会施設  物品販売業を営む店舗 飲食店 サービス店舗 宿泊施設 興行施設 文化施設 展示施設等 運動施設 遊興施設 公衆浴場 事務所 工業施設 地下街 複合施設 共同住宅 道路 公園・緑地、庭園、動物園・植物園・遊園地 公共交通施設 路外駐車場 (2)整備基準適合証の交付 ・整備の達成を認定することによって整備を誘導するため、表彰の意味で適合証を交付するものです。 ・整備基準に適合させた「一般都市施設」の所有者等が、市長に交付を請求し、市長が『整備基準に適合している』と認めた場合に、交付されるものとします。 2.特定施設の整備 −新設又は改修― (1)特定施設の定義と整備に係る義務の概要 ・「一般都市施設」のうち、一定の種類及び規模以上のものを「特定施設」と定めます。 ・その上で、特定施設の「新設又は改修」の際には、設計段階で届出を出し、基準への適合状況の確認を受けるよう求めます。 ・なお、特定施設となる対象施設の範囲、適合を求める整備基準や、届出の時期、届出の際に提出しなければならない書類など、届出手続きの詳細は、条例の中にではなく、規則に定めます。 (2)本条例に定める特定施設の範囲と適合を求める基準 ・『日野市福祉環境整備要綱』では、届出施設の範囲が非常に広かったことから、条例における範囲の設定は委員会でも議論になりました。議論の結果、以下の基本方針をもって、東京都と同等にまで対象施設の範囲を狭めるものとします。 ■特定施設の整備についての今回の条例の基本方針 ・実効性の担保を優先します。まずは手続きが適切に行えるようになるための助走段階と位置付け、対象施設の範囲と整備基準は、東京都と同等とします。 ・複雑化した手続きの簡素化(より届出を出しやすく)します。そのため、手続きでは東京都を上回るものを定めて、東京都の手続きを適用除外とし、今まで、東京都と日野市二本立てであった手続きを、日野市に一本化します。(手続きが1本ですみます。いまは、両方で2本でした)。 ・今回はあくまで過渡期の条例と位置付け、見直し期限を設けて、今後見直します。 ■基本方針を踏まえて、今回は以下のとおりとします。 1)対象施設の範囲・整備基準は、東京都と同等とします。 2)日野市の特色に合わせた独自の対象施設の範囲・整備基準の設定は、東京都福祉のまちづくり条例の改正後に行います。(平成21年4月改正予定) 3)なお、条例制定〜改正までの過渡期に建築される施設についても、暫定措置として、入り口の段差解消などの最低限の基準への適合を求めるべきという意見もあります。これは、課題として残っています。 (3)特定施設の整備を誘導するための手続き ・『日野市福祉環境整備要綱』の運用状況等を調査したところ、基準への適合をチェックするための「届出」の提出が担保されておらず、半数近くが届けられていないことがわかりました。また、審査担当者が一人しかおらず、また整備後の検査もないので、基準どおり整備されているのか疑問との声もありました。 ・そのため、要綱よりも強制力をもち、届出担保策、整備担保策を明確に位置付けた、実効性のある制度づくりと体制づくりを条例に定めるものとしました。 @ 条例に位置づける届出担保策 ・届けなかった場合の勧告・公表   ・基準を上回る整備努力に対する表彰制度 ・条例の内容・手続きに関する周知  ・白書による届出状況のモニタリング A 条例に位置づける整備担保策 ・担当課に「技術職員」を配置     ・きめ細かいチェックと、指導・助言 ・設計変更の余裕をみた早期の事前相談 ・届出審査終了時に通知書を交付 ・設計内容が不十分な場合の勧告・公表 ・工事完了時の完了届提出、完了検査 ・必要に応じた立ち入り調査権の付与  ・職員の研修 ・市民(利用者)が、完成施設をチェックできるしくみ 3.特定施設の整備 −既存特定施設の状況の把握等− ・届出を求めているのは特定施設の『新設または改修』の場合のみで、特定施設でも既存の施設は届出の対象になりません。そのため、ここでは、既存の特定施設についても「整備基準に適合させるための整備の状況の把握」に努めるよう、努力義務を定めます。 ・また、市長は、当該既存特定施設の整備基準への適合状況について、報告を求めることができるものとします。 ・さらに、新設及び改修の場合と同様、必要に応じて「指導及び助言」「指導及び助言に際して必要な、報告の徴収及び立ち入り調査」もできることとします。 4.市施設の先導的・モデル的整備 ・民間に対して整備を求める以上、市が先導的に整備を進めることを努力義務とします。 ・また、自ら新設・改修する施設については、整備基準に適合する以上のモデル的整備を率先して行うことを、努力義務とします。 5.施設をつなぐ連続した整備の推進 (1)推進地区 ・施設それぞれについて整備を進めるだけでなく、施設相互のつながり部分にも配慮して、途切れのない連続したユニバーサルデザイン空間の整備が必要です。 ・そのため、地区を指定して、面的かつ集中的に整備を進めるしくみを位置づけます。 ・なお、推進地区の指定手続きと実施は、日野市まちづくり条例に定められた「協働による重点的まちづくり」に委任します。 (2)安心・安全でわかりやすい移動空間の連続した確保 ・家を出て、目的施設まで移動して、用を足すといった一連の行動で目的を達するためには、施設内はもとより、施設と施設の間でも途切れることなく連続した円滑な移動空間を確保することが必要です。 ・そのため、施設所有者間で協働して敷地内通路を通りやすくする、適切でわかりやすい案内表示で移動をしやすくする、はみ出し陳列・看板を排除する、物品放置などを防止するといった「安心・安全な移動空間の確保」を努力義務として定めます。 ・また、道路や通路の確保に市民が積極的に協力することも、努力義務として定めます。 X.継続的に発展していくしくみ ここでは、継続的発展のしくみとして、大きく以下の2つを定めます。 1)「計画・設計」「実施」、「これら計画と実施の内容及びプロセスの評価」と、それを踏まえた「改善」により、継続的にユニバーサルデザイン化を推進していくしくみ 2)多様な市民の参画・意見の取り入れと、相互交流のしくみ さらに、上記のしくみを動かすための体制づくりも定めます。 1.全体の概要と基本方針 ■可能な限り使いやすさを追求していくサイクルをつくります ・個別のプロジェクトについて、「計画・設計」「実施」、そして、「計画と実施の内容及びプロセスへの評価」とそれらを踏まえた「改善」のサイクルを築くことにより、継続的にユニバーサルデザイン化を推進していくしくみをつくります。 ・「計画・設計に当たって、代替案を作成して比較する」、「実施の工法や材料の選択を吟味する」など、各段階の内部でも、常に評価と改善案の検討が行われるものと考えます。 ・さらに、上記の個別プロジェクトの発展に留まらず、個別プロジェクトから得られた情報・知見を情報センター(ユニバーサルデザイン白書の作成組織)に蓄積し、この蓄積した情報等を他のプロジェクトや制度・基準そのものの見直しに反映させていくことで、全体も発展する流れをつくります。 ■多様な人々の参画・意見の取り入れと、相互交流を促進します ・上記サイクルの各段階で市民の参画を促し、多様な利用者ニーズと施設の使いやすさのギャップを埋め続けることで、「基準はクリアしたけれど、使いにくい」を着実に解消し、本当の使いやすさをめざします。 ・また、市民参画の過程では、現場での参画者相互の交流を重視します。交流により、多様な人々が互いのニーズの違いを理解し、相互に歩み寄ることで、より多くの人々にとって使いやすい施設等ができていくものと考えます。 ・さらに、市民参画の過程で得られた知見・経験を、市職員や事業者、市民の研修に反映させることにより、他の人にとっての使いやすさまで考えて、参画の場で意見を言うことができる人材を育てます。 ■継続的発展プロセスを動かすための体制をつくります ・継続的発展プロセスを動かすための体制として、以下を設けます。 ●庁内の人的体制の整備(例えば、施設のチェックに当たる人材の補充・研修など) ●庁内の関係各課の横断的連携の確保(連絡調整会議の設置、担当課の創設など) ●審議会の設置(学識経験者、事業者、市民、職員、関係機関からなる組織) 2.計画・設計段階 (1)ユニバーサルデザイン推進計画の策定 ・都市計画、交通、道路、福祉など、関係する各課をまたがる「ユニバーサルデザインの推進計画」を策定することを市長(市)に義務づけます。 ・内容には「目標像・整備目標値」「取組みの方向」「目標実現に向けての主要施策」などを含むと考えます。 ・策定に当たっては、市民、事業者、関係団体の意見を計画に反映させるための措置をとるよう義務付けます。さらに、審議会による定期的な見直しも義務付けます。 (2)市の分野別計画へのユニバーサルデザインの視点の取り入れ ・「総則」の「市の責務」に、「市は、都市・交通計画をはじめ、あらゆる市の計画や事業を、ユニバーサルデザインの観点から検討するものとする」ことを定めます。 (3)事業者が行う施設整備への反映 ・前章で、建築物、道路、公園等、施設について、整備基準に適合させる義務(一部努力義務)を定めます。 3.実施段階 (1)市施設の先導的・モデル的整備 ・市の施設の先導的整備を定めます。 ・「総則の市の責務」に、「施設の新設又は改修などの事業実施の機会を捉えて、積極的にユニバーサルデザインの導入に努める」と、努力義務を定めます。 (2)事業者の主体的・積極的な整備 ・「総則の事業者の責務」に、「利用者・就労者の視点に立ち、ユニバーサルデザインに配慮して事業を実施するものとする」「主体としての自覚をもち、自主的にユニバーサルデザインのまちづくりに係わるものとする」ことを定めます。 (3)市民主体の整備  市民とのパートナーシップによる整備・支えあいの誘導 ・練馬区の「福祉のまちづくりパートナーシップ区民活動支援事業」のように、市民発意の提案に金銭面の支援を行うことにより、実施を誘導するしくみも有効と考えられます。 ・そこで、「市民が主体的にユニバーサルデザインを推進する目的で提案した事業で、市長が適切と認めるものに対し、必要な支援を行うことができる」と、条例に位置づけます。 ・なお、「総則の市民の責務」の中で、「ユニバーサルデザインのまちづくりの推進主体としての自覚をもち、自主的に係わるものとする」と定め、市民に参画を求めます。 4.評価・点検段階 (1)評価・点検の実施と結果の改善への反映 ・評価・点検については、評価点検の実施とその結果の改善への反映を市長に義務づけることにより、市の評価・改善姿勢を市民や民間事業者に明確に打ち出すものとします。 (2)白書の作成 ・今回、要綱に基づく届出の状況を調査してはじめて、届出を出すべき施設の半数近くが届出ていなかったという事実が明らかになりました。制度をつくったらそれで終わりではなく、その「運用状況を定期的に確認・評価」しなければ、このように、制度そのものが形骸化する危険性があります。 ・また、立ち入り調査や市民参画による現場点検、ワークショップで出された「評価」「評価・改善の過程で出された意見」「評価に基づいた改善提案」「優良事例」などの情報を一元的に蓄積し、提供する体制をつくれば、個別プロジェクトで得られた知見を他に反映することができます。例えば、「上位の計画や制度、整備基準の見直し」「よりよい整備手法の開発」「優良事例のまとめ・普及による他事例への反映」「研修・啓発への活用」につなげることができると考えられます。 ・このため、定期的な白書の作成を条例で義務付けます。 ・白書を作成する組織の設置も義務付けます。この組織は、必要事項の調査・とりまとめを行うとともに、その結果に基づいて、後述の審議会に「上位の計画や制度、整備基準の見直し」「よりよい整備手法の開発」を提案したり、他に情報提供を行ったりする情報センター機能を担うものとします。 (3)研修 ・研修システムの充実で、ユニバーサルデザインに対する理解のある人を増加させることが、ユニバーサルデザインの継続的な発展には必要だという指摘がありました。 ・これを受け、研修機会の確保の努力義務を条例に位置づけます。 ・さらに、総則の「市の責務」「事業者の責務」に、「市の職員、事業者の従業員や市民への研修の努力義務」を定めます。 ・なお、委員会では、研修と調査員の確保・増加に関する制度の提案がありました。 ■戦略的な「人材育成」のための研修制度の提案(委員提案) ・一定時間研修を受けた人に6時間でレベルT、12時間でレベルUなどの修了書を出し、レベル別に見方のレベルをそろえる。 ・市民調査員を設ける場合は、上記の修了証を持っている市民調査員に委嘱。交通費を支給するなどして、受講の促進と調査員の増加にもつなげる。 ・市民調査員による調査結果・知見は白書に蓄積し、今後の研修や制度の見直し等に反映させる。 5.各段階における市民参画 (1)市民意見の収集・反映 ・市民が困ったところについて、意見をいいやすい機会と方法の確保に努めます。 ・現在、日野市では、有志によるテーマ別の市民討議会や、市政にひとこと投函カードなどの市民意見の収集の取組みが行われています。 ・こういった取組みをさらに発展させるなどにより、意見を言える機会を多く設けることを、市長の努力義務とします。 ・また、意見を述べやすいような配慮を義務づけるとともに、収集した意見・要望を反映させた改善策を講ずべきものとします。 (2)市民参画の機会の確保 ・計画・設計段階や整備の現場等での意見交換することにより、 □事業者の気づきによる、本当に使いやすい施設の設計や整備の誘導 □他者への理解を深めることによる、整備等に関わる利害の対立の調整 が期待されます。 ・そのため、あらゆる場面で参画機会を設けることを、市長への努力義務として定めます。具体的には、市民が建物に出向いて使いやすさを調査する「市民調査員」や、まち歩き点検、計画策定ワークショップ、設計検討ワークショップなどへの参画が考えられます。 ・また、参画へのきっかけづくりとして、一般向けの交流機会(例えば、交流会・体験会など)の確保の支援にも努めるものとします。 ・さらに、これらの参画機会の周知の努力義務も定めます。 (3)情報提供・啓発活動 ・『日野市福祉環境整備要綱』で届出が半数近く出ていなかったのは、当要綱があまり知られていなかったためではないかという指摘がありました。また、せっかく施設を整備しても、それを利用するための情報が不足していたために、あまり使われないということもあります。 ・様々な場面で、情報は、以下のような役割を果たすため、情報の提供の努力義務を市及び事業者に対して定めます。また、相互の情報提供・情報共有に努めると定めます。 ・情報の提供の役割は、ユニバーサルデザインの施設整備を誘導する、整備した施設を有効に利用する、継続的な発展のための取組みを円滑化にする、これまであまり関心のなかった人へのアプローチなどです。 ・さらに、市民の関心を高めるために、啓発パンフレットの配布などの啓発活動を市長に義務づけるほか、プロモーション活動の展開への努力も求めます。 Y.体制づくり ・ここでは、手段やしくみを動かし、継続的な発展を支える体制づくりを位置づけます。 1.審議会 ・今回の条例検討委員会は提言書提出をもって解散となります。しかし、条例に位置づけた「推進計画」や「白書」を作成したり、「各種のしくみ」を動かすに当たっては、全体及び個別の状況を把握し、進捗を管理し、適宜アドバイスするといった常設の組織の存在が望まれます。 ・そのため、調査・審議を行う常設の「ユニバーサルデザイン推進協議会」を新たに設けるものとし、その設置を条例に定めます。 ・委員の構成は、学識経験者、市民、事業者、関係行政職員とします。 2.庁内横断的組織の整備 ・個別バラバラの取組みをつないでいくことが必要と委員会でも指摘されたように、ユニバーサルデザインのまちづくりを推進するためには、庁内関係各課の連携が重要です。 ・そこで、「ユニバーサルデザイン推進室」のような新たな横断的組織をつくることは難しくとも、定期的な連絡会議をつくるなどの対応を、条例とは別に市に求めます。 Z.その他 1.表彰 ・主体的な取組みを支援するため、表彰制度を設けます。 2.ユニバーサルデザインのまちづくりの推進の支援 ・支援制度、特に金銭的な補助制度等がないと、整備はなかなか進まないとの指摘を受け、条例の中では、支援に努めると位置づけます。詳細は別途検討を進めます。 [.見直し期限 ・過渡期の条例と位置づけた以上、見直し期限を条例の附則に定めて、確実な見直しを担保します。 ・また、整備基準を定めている規則にも、「国、都などの改正があった場合、改正後速やかに、日野市条例規則の見直し検討作業に着手する」ことを位置づけるものとします。