◎新春対談 日本の食文化と食育を語る  あけましておめでとうございます。皆さん新しい希望を胸に新年をお迎えのことと思います。市では昨年6月に成立した食育基本法に沿い、食育推進計画の策定をはじめとするさまざまな健康施策に取り組んでいます。特に今年は、「子育てと健康の要は食育にあり」をスローガンとしています。そこで恒例の新春対談では、服部栄養専門学校校長服部幸應(ゆきお)氏をお迎えし、日本の食文化の伝承や食育の大切さなどについて語っていただきました。 ○食育基本法と地産地消 市長 あけましておめでとうございます。 服部 おめでとうございます。 市長 昨年は講演会(注1)等でお世話になり、ありがとうございました。 服部 ありがとうございました。 市長 市では、市民の健康増進施策を積極的に進めていまして、健康は、運動だけでなく、食も大事であると考えています。しかし、食について、「食事を済ませる」というような言葉があるとおり、真剣に考えられていないところもあって、これでいいんだろうかと思っています。そこで、食育基本法(注2)ですが、これは先生がずいぶん積極的に関わられていて、私どもも「食」についての教育を、大人も子どももやらなければいけない時期だと、思っているところです。そこで今号の対談は、服部幸應先生をお招きして、お話をお聞きしたいと思います。  私ども自治体が、これから「食」について、あるいは「食育」について、どのように進めたらいいかお教えいただければと思います。 服部 食育基本法は、今年で2年目になりますが、昨年の3月に、国は平成18年から22年までの5カ年の食育基本計画を立て1年が経過しました。まだ理解されてない部分もあり、残りの4カ年で進めていこうとしています。  日野市は、国の案が通る前から「食育」に関して手をつけられていたということで、市長さんは引っ張っていくのが大変だったと思います。  また、日野市がすばらしいと思ったのは、「地産地消」を前からうたっていて、学校給食の中に、「地産地消」の考え方を入れていることです。これはもう、そのことだけでも豊かな市だといえると思います。 市長 ありがとうございます。 服部 日本は食料自給率が40%ぐらいしかなく、60%が輸入ですので、これを何とか逆転させたいと思っています。後は、食生活を少し控えめにして、昔の日本の食生活に戻す。すると56%も自給率があることになります。これも「地産地消」の考え方の一つです。  ぜひ、市が先頭に立ち、「食育」が何であるかということ、「しつけ」が何であるかということを、教えていただけるような場所の提供をお願いしたいと思います。 市長 今、先生のお話の中で、いくつか、日野市のこれまでの取り組みを、評価していただいた部分があり、大変うれしく思います。市では、学校給食での地元野菜利用をだいぶ前からやっています。しかも、できるだけ地元のどこの農家のきゅうりです、トマトですとわかる形でやってきています。それがもう、20数年続いていまして、そういう意味では、まさに先生が言われたように、学校と地元の農家の連携もとれるようになってきました。これは継続していかなくてはいけないわがまちの宝だと思っています。  市は、食育基本法を踏まえて、市民と一緒に条例を作るため、検討委員会を立ち上げたところです。「食育」について先駆的な取り組みができればいいなと思っています。 服部 それはすばらしいと思いますね。 市長 先ほど、「場づくり」というようなお話がありましたが、家庭、学校、自治体そして行政が「食育」を行っていく上で、栄養指導以外にも、いろんな広がりが必要だと思うのですが、どうなんでしょう。 服部 私は、料理学校、調理師学校、栄養学校の先生方を講師として派遣したらいいと思います。「食育」というもの自体の本質的なことを分かってもらうためにも。 注1 講演会  昨年10月、市民会館で健康フェア&くらしのフェスタ記念事業として、「食育のすすめ〜食と心の健康」をテーマに行われた服部氏の講演会。 注2 食育基本法  国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むために食育を総合的、計画的に推進することを目的として、平成17年6月に成立し、同年7月から実施。 プロフィール 服部幸應(はっとりゆきお)氏  昭和20年東京都生まれ。医学博士。学校法人服部学園理事長、服部栄養専門学校校長。内閣府「食育推進会議」委員。講演会やメディアなどで食育の普及活動を精力的に行う。主な著書は「食育のすすめ」、「大人の食育」ほか多数。 (2面へつづく)