全職員必携「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」

このページの情報をツイッターでツイートできます
このページの情報をフェイスブックでシェアできます
このページの情報をラインでシェアできます

ページID1011369  更新日 平成31年2月27日

印刷 大きな文字で印刷

 日野市では、全ての職員が「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」を携行し、一人ひとりが市の魅力の発信を担っています。この「職員手帳」とは一体何なのか、その中身と魅力に迫ります。(取材・文/麻宮しま)


「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」とは⁉
日野市の魅力を伝えるための“全力で攻める”手帳が誕生

写真:「職員手帳」全体
日野市の全職員が持っている「職員手帳」。ほぼB6判で、厚みは5ミリメートルほど

前代未聞!
日野市発の「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」

 2019年2月、おもむろに配布されたものを見て、職員たちはいっせいに目を丸くした。ひとりひとりに手渡された”手帳”の表紙には、「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」と銘打たれていたからだ。

 これは、日野市広報担当やシティセールス推進課、都市計画課、学校課などの職員によるプロジェクトチーム、つまり日野市役所の職員が、職員のために作り上げた手帳である。通常は、自治体が手帳を制作することはあっても、中身は街の基本情報や服務規程などが記載された事務的なものだ。

 しかし、この手帳は違う。とおりいっぺんのことは書かれていない。ページをめくると、日野市の魅力や市職員の仕事内容などがQ&A形式でイラストとともに紹介されている。すべて、市の職員約3000人を対象に実施したアンケートの回答結果によるものだ。といっても、巷の広報誌で見られるような紋切り型の答えはひとつとしてない。

 まず、最初に紹介されるのが、「日野市ってどこ?」と訊かれて「立川と八王子の間、かな」と答える、日野市民の“定番自虐ネタ”だ。「日野市は住んでみると良いところがたくさんあるすばらしい街」だと実感している一方で、「市外の人たちにはイマイチ知られていない地味な街」という後ろ向きな自己評価がそこにはある。それをこの手帳は「東京のど真ん中」、「横綱のごとく、デンと構えている」と表するばかりか、「太刀持ちは八王子くんに、露払いは立川くんに任せています」と余裕たっぷりに構えてみせる。全編がこの調子で、ユーモラスなQ&Aを読むうちに、日野市の魅力とそこで働く職員の想いを伝える仕組みになっているのだ。

画像:「職員手帳」p14,15
太刀持ちの八王子くんと露払いの立川くん

 中には「なんでそんなに縦割りなの?」といった市民からのストレートな苦情も紹介されている。それに対し、多岐にわたる市民生活のサポートを、専門性をもって行うためには縦割りシステムこそが重要であることを、気負わず、しかしキッパリと答えている。

 つまり、この手帳は職員のホンネとノウハウが詰まった“秘密のアンチョコ集”なのだ。きれいごとで済ませない生の声を紹介しているからこそ、「絶対に見せてはいけない」のである。自治体の制作物としては、相当に“攻めている”。


「職員はワクワクして働いているか?」
危機感が生んだ全く新しいプロジェクト

 日野市はなにも、奇をてらったり話題性を狙ったりして「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」を作ったわけではない。背景には、市の抱える強い危機感があった。

 日野市は新宿まで約26分の利便性を有しながらも、平地も高地もある多様な地形をしており、多摩川や緑地など豊かな自然に恵まれている。高幡不動や新選組ゆかりの地など貴重な史跡が多く、多摩動物公園や京王れーるランドなどのレジャー施設も人気だ。治安が良く、ものづくりがさかんで、焼きカレーパンやTOYODA BEERなどの名物も数多い。多摩丘陵はサイクリストにも人気のスポットだ。

 こうした環境に市民の満足度は高い一方で、「SUUMO住みたいまちランキング2018関東版(リクルート調べ/2018年2月時点)」においてベスト100圏外(106位)に位置するなど、対外的なPRが十分に行き届いているとは言い難い。より効果的で効率的なアピールを考える必要があった。しかし、一方的に伝えようとしてもなかなかうまくいかないことは、これまでの経緯が示している。

 そこで日野市は、さらに考えを深めた。「伝えようと躍起になるのではなく、自然に伝わる」ことを目指したのだ。形式的な数値やデータだけでなく、そこに生きる人間の感情を乗せることで、感動は伝播していく。その足掛かりとして、「まずは日野市で働く職員がワクワクできて、自分の事としてとらえられる」ことを目指し、幾度ものワークショップで試行錯誤した結果生まれたのが、「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」なのである。

 さらに、「この手帳プロジェクトにはもうひとつの狙いがある」と荻原弘次副市長は語る。

「今後職員の数は漸減し、AIを活用する分野が増える中、職員にとっては市民の皆様への応対など生身の人間にしかできない業務の比率が高まります。市民の生活すべての分野に関わる業務を行う市職員は、柔軟な思考と発想を持ち、さまざまな事態に対応できる応用力を擁することが求められます。公務員は失敗を嫌い縮こまりがちですが、その意識を変えていきたいですし、変えていこうとする姿勢を形として示すことが大事だと考えました」

 そのために、前例のない自由な発想によるプロジェクトが求められ、それに応える形で手帳が誕生した側面もあるのだ。


「絶対に見せてはいけない」からこそ話したくなる!
人間心理をついた“感動の伝播”を狙う

 その姿勢を表すひとつが、刺激的なタイトルである。「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」と秘密めいたタイトルは、職員の掛け値なしのホンネを保証するだけでなく、逆説的に「禁じられるほど人に話したくなる・見せたくなる」という人間心理を応用したプロモーション戦略でもある。つまり、この手帳を手にした人からどんどん市外へと日野の魅力を「自然に伝えたくなる」ことを前提として踏まえたタイトルだ。職員と市民のコミュニケーションのきっかけづくりを担うアイテムとしても、おおいに期待が寄せられている。

写真:「職員手帳」タイトル部分
「見せてはいけない」と言われると見せたくなる

 一方で、市民の税金を投入する公的事業で「絶対に人に見せてはいけない」と、ある意味で排他的なタイトルを打つのはいかがなものか――。そういったネガティブな反応の可能性も予想された。

 しかし、「賛否すら起こらないものに、“伝えたくなる魅力”など持ちえない。逆説的なタイトルは、今後ますます重要とされるグローバルな多様性や柔軟性を表すものであり、日野市の未来の姿勢を示すものなのです」と荻原副市長は断言する。「このタイトルを通せないようでは、市役所が硬直化していると自ら示しているようなものだ」と、予算審議や内部への説明にあたった。

 このように、市長から手帳制作チームまでを貫く確固たる信念こそが、一見して「新しい」と感じる“攻めの手帳”を実現させたのだ。


「全員参加型」のアンケートをかなえるための“奇策”とは⁉

 前代未聞の試みに、当初は手帳制作チーム内にも不安の声はあった。制作チームが目指していたのは、職員による職員のための手帳。職員のホンネを引き出すアンケートにいかに回答してもらえるかが、企画の成否を決めると言っても過言ではない。「他人事のようにとらえず、同じ熱量で面白がってくれるだろうか?」という懸念を感じていたという。

 そのため、日に10時間ものミーティングを重ね、企画趣旨を理解し共有してもらうためにアンケートの冒頭に説明文を置き、設問の設定や言い回しを熟考するなどの工夫を凝らした。

 中でも「最も効果的だった」と口をそろえるのが、アンケートの告知方法だ。なんと、職員ひとりひとりの夏の賞与明細、給与明細に、「市長からの秘密の招待状」という形でweb上の匿名アンケートサイトへ誘導するQRコードを同封したのである。なるほど、これなら絶対に読まれるはずだ。「開封した職員がざわつくのを眺めながら、手ごたえを感じました」と制作チーム。

 果たして、反応は上々だった。次々と寄せられるリアルな職員のホンネに、制作チームは収録作を選ぶのに迷ってうれしい悲鳴を上げた。「さまざまな視点からの意見や日野への深い愛を感じた」という600もの回答は、まごうことなき市職員の“ホンネ”である。まさに日野市役所全員が一丸となって作り上げた1冊となった。


手帳は意識改革の第1歩
次の1歩につながることを祈って

 約8カ月間の制作期間を費やしたこの手帳制作プロジェクトに携わったメンバーは、職員の持つ大きなポテンシャルを感じている。「市役所の意識変革は、端緒についたばかり。この手帳が日野市と市役所の変わるきっかけとなることを期待しています」と語る。

 荻原副市長によれば、今後の反応や反響によっては、次の展開の可能性もありえるという。

「その時は今回とは違う制作メンバーで、ひょっとしたら“手帳”という形ではない別の何かになる可能性もあります。すべてはこの手帳により、自由でやわらかい発想をもとに一歩先へチャレンジできる職場だという意識が職員に浸透した時、どんなイノベーションを起こせるかにかかっているのです」

 「全員参加型でずっと持ち続け、だれかに話したくなる、職員による手帳」。その本質は、刺激的なタイトルや手帳という形態にあるのではない。いかに「ワクワクして働けるか」を追求した結果が、「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」という形に結実したのだ。いわば、未来の日野市を作るアイデアと可能性の詰まった夢の宝庫なのである。


「絶対に人に見せてはいけない職員手帳」概要

配布日 2019年2月8日
判型・印刷 B6変形・2色刷り
ページ数 全96ページ
企画・編集 日野の魅力発見職員プロジェクトチーム
発行 日野市

 

このページに関するお問い合わせ

企画部 市長公室 広報担当
〒191-8686 東京都日野市神明1丁目12番地の1 日野市役所4階
直通電話:042-514-8092
代表電話:042-585-1111
ファクス:042-581-2516
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。