◎睡眠のメカニズムを知ろう 私たちは、人生の約3分の1を睡眠に費やしています。 睡眠は、一晩を通じて、深い、浅いを繰り返しています。 睡眠をとることで脳や身体にどのような変化が起きているのか、眠りの森の秘密を探りに出掛けましょう。 ▼深い深い眠りの底 ノンレム睡眠 脳を休ませ、記憶の再構築や脳の機能回復などが行われます。 特に眠りに入ってからの3時間は大切で、集中的に大脳を休ませる「眠りのゴールデンタイム」と言えます。 脳全体の血流が減少し、体温が低下して呼吸や脈が穏やかになる深い睡眠です。 ▼浅い眠りが夢を見させる レム睡眠 脳は覚醒しているときと同じように活動するため、奇抜な夢を見たり、カロリー消費も比較的多くなります。 体は脳からの信号が遮断されるため動きません。 ▼山あり谷あり眠りの旅 睡眠サイクル 睡眠中は、ノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期で交互に現れます。 この周期はひと晩に約5~6回訪れますが、睡眠が進むと徐々にレム睡眠の割合が増え、起床を迎える準備状態に入ります。 ◆眠りの森を形づくる不思議なホルモン ▼コルチゾール 栄養の代謝を促し、免疫物質を作るホルモンです。 起床の約3時間前から分泌され、脈拍や血圧を上げて起床の準備を始め、朝の活動に備えます。 ▼メラトニン 体内時計によって制御される、夜を知らせるホルモンです。 寝床に入る数時間前に自然な眠りへと誘います。 日中に光を浴びることで夜間の分泌が促されます。 ▼成長ホルモン 入眠直後の深いノンレム睡眠中に分泌され、 子供の場合は主に成長を促し、大人の場合は傷を負った細胞の修復や肌の新陳代謝を促します。 《イラストあり》 ■光でリセット体内時計 私たちの睡眠と覚醒のサイクルは、24時間前後を基準に脳を中心とした体内時計によって決められ、 内臓などの末梢時計も含めホルモンの分泌や血圧、体温調節、消化吸収といった生理機能にも影響します。 しかし、現代人の生活がこのサイクルにかなわず、人為的な時差ぼけ状態に陥ることがあります。 体内時計は光刺激によってリセットされるため、毎日、朝日を浴びて体内時計を調整しましょう。 ■眠れぬ夜の果てに… 体内時計が乱れたり、睡眠不足になると、日中の眠気を引き起こしたり、集中力を欠くなどの弊害が生まれます。 このような状態が慢性的に続くと、命にかかわる疾患を引き起こす場合があり、注意が必要です。 《高血圧》 睡眠中は体をリラックスさせる副交感神経の働きで血圧が下降しますが、 ぐっすり眠れない状態では、交感神経が優位に働き血圧の高い状態が続きます。 慢性的な高血圧は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。 《糖尿病》 睡眠不足は食欲増進ホルモンの分泌を増やし、食欲抑制ホルモンを減らすため、肥満になりやすくなります。 また、血糖コントロールを行うインスリンの働きを悪くさせ、糖尿病のリスクを高めます。 《免疫力の低下》 腸はウイルスや細菌から体を守る免疫細胞を作ります。 その活動は睡眠中に活発になるため、睡眠不足は免疫力の低下につながります。 風邪をひいて熱が出ると眠くなるのは、身体が免疫細胞を増やそうとする反応です。 《心の病》 睡眠不足が続くと脳の学習機能が阻害され、良いことを忘れて悪いことを記憶するなど、ネガティブ思考に陥り、 うつ病などの精神疾患にかかりやすくなります。 うつ病になるとさらに眠れないという悪循環を引き起こすため、 眠りたいのに眠れないという場合は、早めに医療機関などに相談しましょう。