大坪 また新しい地区センターを建てる際、地域の方々と行政が協議会を立ち上げ、 地域の活動、コミュニティーを活性化させるためにどのような建物・仕様にするかを一緒に議論しながら進めていく動きがあります。 すでにこのような形で建て替えた例もあります。 企業との関係では、先ほど、連携協定を結んでいると申し上げましたが、市は高齢化に伴う医療・介護の課題を抱えています。 企業はこの分野でビジネスを展開したい、行政は企業の力を借りて課題を解決したいと考えています。 そのため市と企業が交流会を立ち上げ、企業はニーズを探りながらビジネスを立ち上げていく。そういう流れは進んでいます。 このほか、市内にはNPO、市民団体がたくさん存在し、その方々が連絡会を作っています。 市でも自治会の活性化を促進するため地域協働課がつながりを持って市民活動支援を行っています。 今、いろいろな分野で種はまいていますが、これらから芽が出てくれればいいなと思っています。 ぜひ、先進の紫波町を見習っていきたいと思います。 まちの資源を大切に守る 熊谷 紫波町は前町長時代から一貫して循環型のまちづくりを進めており、私も引き続きこのことを基本にしています。 町役場庁舎は、紫波町産の木材でできています。3階建て約6千600平方メートルで、 役場庁舎としては日本最大級の木造建築物です。 庁舎の冷暖房も木質チップを利用した熱供給によって行っています。このような形で町の資源を循環させています。 大坪 日野市は、かつて「多摩の米蔵」と言われるほど米作が盛んでした。 その名残りで116キロにも及ぶ農業用水があり、浅川、多摩川という大きな河川もあり、水のまちという特徴があります。 多摩川にはアユが遡上するほど川の水もきれいになりました。用水にもさまざまな魚がいます。 多摩丘陵や里山、湧水、また東京都でも比較的緑が多い。その緑と水をどう守っていくかという課題があります。 小水力発電などにも取り組んでみようと考えています。 あとは、生ごみを肥料にして農作物を作ろうという取り組み。これは市民が中心でやっていますが、行政も応援しています。 日野市・紫波町 歴史と文化レベルの交流を 熊谷 私は、まだ日野市を訪問したことがありませんので、まずは1度、訪問したいと考えています。 ぜひ、紫波町にないところを学びたいと思っています。 大坪 日野市になくて紫波町にあるものはたくさんあると思います。 私は、そこを学ばせていただきたいと思います。 今、日野市は複数のまちと防災協定・相互援助協定を結んでいますが、歴史・文化を軸にした交流は、 巽聖歌で縁のある紫波町だけです。今後は歴史と文化レベルの交流をしていきたいと考えています。 その延長線上には、友好都市・姉妹都市などがあるかもしれません。 日野市にもたくさんの歴史・文化があります。ぜひおいでいただきたいと思います。 よそにはないものがうちにはある 熊谷 紫波町には、日本トップクラスの人工芝を使用した県のフットボールセンターがあります。 そこで練習すると、他の場所ではできないと言う人もいるほど若い方に大変人気です。 また民間によって造られたバレーボール専用体育館もフランス製のオリンピックと同じ仕様の床が使われており、 全国から多くの人が合宿に訪れます。ある意味よそにないものが紫波町にはある。 そのことは、確実に成功しているのかなと思います。 大坪 よそにないものをということについては日野市も努力しているところです。 日野市でも地ビール(TOYODA BEER)が昨年7月に発売されました。 最近、市内の旧家の蔵からラベルやコルクが出てきて、 調べたら明治19年からその場所でビールを製造していたことが分かりました。 これが多摩地域最古のビールを復刻することにつながりました。このことについては、他にないものができたかなと思います。 今年はどんな年に… 熊谷 平成28年、国民体育大会で紫波町は自転車競技の会場になります。 紫波町はブドウの産地で、ブドウ畑の中を走るコースが設定されました。開催は10月です。 ちょうどブドウも食べごろです。ぜひ日野市の皆さんにも来ていただきたいと思います。 また、昔からの商店街でリノベーションまちづくり(※2)を手掛けています。 平成27年9月には、空き店舗の再利用について全国の若い人たちが集まって勉強しました。 これを具体的な形にしていきたいと考えています。 大坪 私は、就任後三つの戦略を打ち出し、それをなぞった形で、地方創生の基本構想を作りますが、 どのように具体化するかが課題になります。 平成26年度から取り組んでいるヘルスケアウェルネス事業「歩きたくなるまちづくり」は、 さらに1歩進めていきたいと考えています。 また産業分野では、昨年10月にPlanT(多摩平の森産業連携センター)という インキュベーション(※3)施設を開設しました。 それをきっかけに起業家同士の交流、創業の動きを強め、さらに市内大手企業や中小企業、大学や金融などの連携・交流を深め、 重層化し、日野市の産業活性化を図っていきたいと考えています。 今年は、それらに取り組んでいく年になると思います。 熊谷 今後が大変楽しみですね。 大坪 今回の紫波町の訪問で、歴史の重みや、交流で培ってきた絆を改めて確認し、日野市の特色を再認識する機会となりました。 今後も、住む人が誇れる、訪れた人が楽しめるまちを目指して、 日野市の魅力を高めるため意欲的にさまざまなことに取り組みたいと考えています。本日はありがとうございました。 熊谷 ありがとうございました。 【写真上】「たきび」の歌碑がある旭が丘中央公園での「たきび祭」の様子(昨年12月) 【写真左下】PlanT(多摩平の森産業連携センター) 【写真右下】TOYODA BEER 用語説明 ※1オガールプロジェクト 民間が主体となった公民連携手法で地域活性化を進め、 手付かずだった紫波中央駅前10.7haの土地に県のフットボールセンターを誘致し、 カフェ・産地直売施設・子育て応援センター・図書館(写真右下)が同居した官民複合施設「オガールプラザ」、 バレーボール専用体育館やホテルなどの民間複合施設(写真下)を相次いでオープンさせ、 さらには先進的なエコ住宅(オガールタウン)の分譲なども行う再生プロジェクト。 ※2リノベーションまちづくり 建物を再生するだけでなく同時に地域の課題を解決するまちづくり手法のこと。 ※3インキュベーション 設立して間がない新企業に地方自治体などが経営技術・金銭・人材などを提供し、育成すること。