新春対談 紫波町長・熊谷泉氏 たきび・巽聖歌が取り持つ縁 深めていこう紫波町との絆 今号の市長新春対談は、都市間交流で童謡「たきび」の作詞で知られ 日野市ゆかりの巽聖歌(たつみせいか)の生誕地・岩手県紫波町にお邪魔し、 熊谷泉町長とこれからのまちづくりのあり方や長年に渡る交流の絆について語り合っていただきました(文中敬称略)。 問合せ先:市長公室広報担当【代表電話】 都市間交流で新しい視点や活気を取り入れたい 大坪 日野市旭が丘は、紫波町生まれで名誉町民である詩人・巽聖歌が、晩年(昭和23〜48年)を過ごした場所です。 平成18年から旭が丘商工連合会が中心となり、旭が丘中央公園で「たきび祭」が行われ、 紫波町の方々にもおいでいただいています。 これまで、紫波町とは旭が丘地域の皆さまがお祭りなどを通じ、長年に渡る交流を続けていますが、 行政同士の交流はなく、私は以前からこのことが気になっていました。ぜひ行政レベルでも交流したいと考え、 紫波町にお邪魔し、ようやく思いをかなえることができました。 今、市では都市間交流に力を入れています。さまざまな自治体の方々とお付き合いさせていただき、 日野市にはないものを見せていただき、新しい視点や活気を取り入れ、それをまちづくりに生かしていきたいと考えています。 紫波町は自然があふれ、伝統や歴史のある場所やものがたくさんあると感じました。 また、オガールプロジェクト(5面用語※1)で建てられたオガールプラザを見せていただきましたが、 公民連携がうまくいっており、また施設のあり方も非常に素晴らしいですね。 熊谷 大坪市長、巽聖歌が取り持つ縁で遠路はるばる来町いただき感謝いたします。 紫波町は、人口約3万3千人の農業主体のまちです。紫波町では名誉町民・巽聖歌をしのび、 有志の方々が毎年のように「巽聖歌童謡まつり」を開いています。 民間レベルでは、町民が日野市にお邪魔して活発な交流をしていますので、 これを機会に行政レベルでも深くお付き合いをしていきたいです。 公民連携の成功事例 紫波町「オガールプロジェクト」 熊谷 先ほど、オガールプラザの話をされていましたが、紫波町はオガールプロジェクトという取り組みが 公民連携の成功事例として有名となり全国からさまざまな方々が視察に訪れています。 町内には、JR東北本線の駅が三つあり、県内でも一つの町に三つの駅があるのは珍しいです。 その一つ、紫波中央駅は約20年前に設置された請願駅です。 当時、駅前開発で町が10・7ヘクタールの土地を取得していました。 しかし、町の財政が厳しく、その土地はしばらく手付かずの状態でしたが、前町長の時代にこの土地をなんとか活用したいと考え、 手法を探り、アメリカで行われていた公民連携という手法を取り入れたのがオガールプロジェクトです。 地方創生の流れの中で国の補助金・交付金に頼らず開発したというところが評価され、多くの方々がわが町を視察に訪れています。 町の土地に民間の投資を引き込んでいくというのは大変であったことは確かです。 オガールプラザという建物を例に挙げますと、この建物は、民間のテナントと町の建物(図書館など)が同居しています。 公的な場所に民間のものを入れることについて、その透明性をどう確保するか。 その説明をきちんとしていかないと町民の方々に理解いただけない。 一般的には、その仕組みを作ることが困難だと言われています。 町は、まちづくりの会社を立ち上げ、町の代理人としてその会社に開発を委ねることにしました。 開発された駅前には芝生の広場「緑の大通り」があり、自由に往来できるよう設計しました。 そこでは、お母さんたちが自由に子供たちを遊ばせています。 大坪 そうですね。若い親子連れ・カップルが集っている光景が大変印象的でした。 岩手県で町というと、お年寄りの方が多いのではと思っていましたが実際は逆でした。 また、若い人たちが集う仕掛けもしているのだろうとも感じました。 紫波町で最初に案内いただいたのが、地元のお料理屋さんでした。 そこで東京では聞いたことがない地元産のキノコや北上川の鮎をいただきました。 これらはお店のご主人が採ってきたものを調理したそうで、このような地産地消ができる町は本当に素晴らしいと感じました。 また、オガールプラザの図書館を見学し、図書館の書架とすぐ隣の農産物直売所が結びついており、 一つの建物の中のお互いの活動がしっかり連携している、これが本当に素晴らしいと感じました。 熊谷 はい。オガールプラザの図書館は規模が小さいですが農業のビジネス支援に取り組んでいます。 そして、建物内に直売所があり、販売する農産物に連動して、図書館で料理のレシピ本を紹介するなどしています。 オガールプロジェクトによりオガールプラザにはさまざまな職種・テナントの方々に入っていただいていますが、 私は、この方々がきちんと商売ができ、家賃が払えて、 お客さんがたくさん来るようにならないとプロジェクトの成功ではないと思っています。 また、町には岩手県の女性と結婚した外国人の方も住んでおり、町の雰囲気が自分の母国に似ていると感じてくれていたり、 駅前のバーベキューエリアでは若い人たちが会社帰りにバーベキューをして、お酒を飲んで電車で帰ったりするなど、 さまざまな方が、この町に溶け込んでくれていると感じています。 産官学が連携し公民協働を育てる 大坪 日野市でも、大学や企業などと協定を結び公民協働事業を行っています。 たとえば、日野駅は新選組のふるさと、甲州街道の宿場町ということで新選組ゆかりの資料館などがあり、 それらを生かしたまちづくりをしたいと考え、実践女子大学と連携し、 「和だけれど新しい」をコンセプトに「和モダン」の取り組みを行い、 若い女子学生たちの感覚や感性で駅周辺のリニューアルをしようとしています。 和装でまちを掃除したり、学生が考えた「のれん」を駅周辺に飾ったりしています。 〈次ページに続く〉 プロフィール 紫波町長・熊谷泉氏 昭和22年生まれ。平成15年に紫波町議会議員、平成19年に県議会議員となり、平成26年2月から現職。 町の持っている資源を最大限に生かし、町民生活の安定を最重要テーマに雇用の創出や児童福祉、 循環型まちづくりを推し進めている。 プロフィール 岩手県紫波町 昭和30(1955)年に1町8カ村が合併して誕生。 岩手県のほぼ中央、盛岡市と花巻市の中間に位置し、北上川が中央を流れ、東は北上高地、 西は奥羽山脈までの総面積238.98km2(日野市の約8.5倍)の町です。 国道4号など6本の幹線と東北自動車道のインターチェンジ、JRの駅が三つあり交通の便に恵まれています。 産業は農業中心で、もち米、そば、麦、リンゴ、ブドウ、西洋梨が有名。